地域公共交通会議等に交通事業者はどのような態度で臨めば良いでしょう?

担当:福本雅之(合同会社萬創社)

地域公共交通会議に出席しているけど、コミュニティバスの協議以外でどう関わるべきかよくわからない

積極的に情報を開示することで、多くの関係者の理解を得る場にしましょう

 地域公共交通会議や法定協議会(以下、2つをまとめて「協議会」)において、交通事業者(鉄道・バス・タクシー事業者)は重要な参加者です。しかしながら、協議会ではコミュニティバスやオンデマンド交通のことばかりが取り上げられ、それよりも圧倒的に利用者の多い鉄道やバス事業者の営業路線について議論することはあまりないのが実情です。

 交通事業者側も、自分たちの営業に悪影響が出るような取り組みに対して反対意見をいうのみで、積極的に協議会の場では発言がなく、たまに発言をするとすれば、路線の廃止や減便についての情報提供ばかりなので、事務局や住民の委員が不信感を抱いてしまう、という望ましくない状況も散見されます。

 今回は、主に路線バス事業者を対象に、協議会にこのような姿勢で臨んでいただければありがたいということを述べてみようと思います。

廃止や減便が決まってから報告するのはNG。

 協議会で交通事業者が主役となる議題の代表例は、路線の廃止や減便に対する協議です。営業路線の廃止や減便は、制度上は協議会で議論することなく国へ届出れば実施できるものですが、コミュニティバスなどへの影響も考えられることから、協議会の場で廃止や減便に至った経緯や利用者への周知などについて事業者から報告してもらうことが望ましいといえます。

 しかしながら、協議会の場で報告される時点では、半年程度後のダイヤ改正で廃止や減便を行うことについての一方的な「最後通告」がなされ、市町村の担当者や住民委員が困惑するという事例が散見されます。このような事例を見るたびに「あと1年早く言ってくれていれば手の打ちようもあったのに」と暗澹たる気持ちになります。

 廃止や減便を考えざるを得ない状況に追い込まれているような場合には、その実施の段階ではなく、検討の段階で是非とも協議会に情報提供をしていただければと思います。

 「減便したい」「廃止を検討している」という話を出すと、市町村や住民から強い反発を受けることや、公開の協議会なのでマスコミが記事にして大騒ぎになるということも想定されますから、二の足を踏む気持ちは理解できますが、正直に「弊社だけでは苦しくて維持できない」と言われなければ、利用促進事業を行政や住民と一緒に考えることも、補助金を投入することも不可能です。実際に行政からの補助金が確保することができて、減便・撤退の時期が一年延長され、その間に適切な対応策を検討することで、減便・廃線の影響を最小限度に抑えることができたケースもあります。

数字を見せることで理解してもらう

 また、「苦しい」と言う際には、是非とも根拠となる数字を見せていただきたいとも思います。もちろん、経営上見せることができない数字もあれば、株主や親会社から止められるものもあるでしょうから、可能な範囲でかまわないのですが、具体的な数字も見せずに苦しい、助けてくれと言われても、税金から補助をする側は動けませんし、住民も納得できません。

 逆に言えば、「運転手が○人足りないので便数を維持できない」「○○線の運行に補助をもらっているが、それでも会社が赤字を○百万円負担している」といったように、明らかに苦しいことがわかるような数字を見せられると、協力して支えなければならないということが多くの人に理解されるとことになります。

協議会は合意形成の場であることを理解して活用する

 事業者路線の廃止や減便であれ、コミュニティバスの運行であれ、補助金を増額することであれ、協議会の最大の機能は地域の関係者が合意形成をすることで、それらを実施するという決断を下すと言うことです。

 合意形成をするための前提条件としては、互いに相手のことを理解し、信頼関係が醸成されていることが必須です。そういう意味で、お互いが手の内を隠していたり、腹を探り合ったりしているようでは信頼関係が生まれるわけがありません。可能な限り情報を出すこと、自分の立場をしっかりと訴えること、さらに相手の立場を考えることが大切です。

 協議会の場を面倒なものと捉えるのではなく、是非、自分たちの理解者を増やす機会と捉えて積極的に活用していただければと思います。

 実際に現場で多くの交通事業者の皆さんと話をすると、本当は減便・廃線などはやりたくない、という場合も少なくありません。協議会の場を適切に活用して、地域の足を支える方策を考える場にしていくことができれば素晴らしいと思います。

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