都市型ロープウェイの可能性

担当:井原雄人(早稲田大学スマート社会技術融合研究機構)

行政
自治体

自走式都市型ロープウェイ「Zippar」というものを見たのですが、公共交通機関の一つとなる可能性はありますか?

天の声
天の声

新しい移動手段は魅力的に見えますね。新しいものだからではなく、自分たちの地域に合うものであるかどうかで考えましょう。

そもそも都市型ロープウェイってなんですか?

 ロープウェイとは鋼索(ロープ)に吊り下げられた搬器(ゴンドラ)を用いた輸送手段であり、法律上は索道と呼ばれます。一般的に山間部の観光地やスキー場に設置されているものを想像することが多いと思います。これは、ロープを張るための支柱さえ建設できれば急勾配などの地形の影響を受けずに導入ができるからです。

 しかし、多くの都市は住みやすい平地に人口が集積してできているため、急勾配などはありません。そこにあえて都市型ロープウェイを作るのは、すでに道路整備されているという都市特有の地形の影響を受けないからです。
 都市の中心部の交通量が増大し渋滞が発生した場合に、周辺の都市開発も進んでしまっていれば、新たに道路を増やしたり、LRTなどの軌道に置き換えるというのは非常に困難です。モノレールでは、高架を支える支柱が大きくなり車線を削る必要がでてきます。これに対して、都市型ロープウェイではすでにある道路の中央分離帯に支柱を建設することで、道路を残したまま新たな輸送手段を加えることができるのが特徴です。

Zipparの開発

 ZipparはZipInfrastructure株式会社が開発を進める新しい交通システムです。ロープと搬器を独立させ、搬器上の既存の電気自動車の駆動部を流用した台車により自走し、従来のロープウェイではできなかったカーブを可能としています。これにより、都市部の需要に合わせた自由な路線設計と輸送力を両立しています。

 都市部での輸送力(詳しくは後述)の確保という点では、LRTやモノレールなどの軌道系の輸送手段と比較されます。LRTと異なり新たな用地買収が必要なく、モノレールより軽量な搬器・支柱を用いることが可能であるため比較的安価かつ短期間で導入できるとされています。

 見た目は索道ですが、自走するというところでは軌道に近い性質をもっています。交通政策審議会の地域公共交通のリ・デザインの実現に向けた取り組みの中でも自走式ロープウェイとして取り上げられています。

Zippar福島試験線での試験走行

輸送力の考え方

 例えば宇都宮のLRTは平日朝は10便/時運行しており、1編成あたり定員が159名なので1時間あたり1590人運べることになります。走行距離14.5kmをおおよそ45分程度で走っていますので20km/hぐらいの速度です。LRTの優位性はこの速度であり、70人乗り大型バスで人数だけで見ると23台のバスが必要ですが、バスは20km/hでは走行することができないため、1時間あたりで同じ人数を輸送しようとするとより多くの台数が必要になります。

同じ条件をZipparに当てはめてみましょう。Zipparの速度は過去の導入可能性調査では25km/hとされており、LRTは途中の電停での停車を含めて20km/hなので、同等の性能を有しているといえるでしょう。問題になるのは1台あたりの定員で、Zipparは12人ですので1590人を運ぶためには133台の搬器が必要になります。
 これを、1時間で送り出すことになりますので、27秒に1台の計算になります。これは、これまでのロープウェイの乗車環境と比較しても速度としては現実的なものといえますが、実際の乗降環境がどのようになるかは、これからの検討となります。

新しい輸送手段としての評価

 自動運転の評価についての記事でも書きましたが、新しい技術というものは価値が満たされていなくても評価されてしまうことがあります。Zipparはまだ試験走行が始まったばかりで、技術的に実現が可能であるかを確かめる技術実証の段階であるといえるでしょう。

 実際に公共交通機関として使えるか、それを使い続けることができるかはまだこれからです。日本初にこだわるのでなければすぐに検討を始める必要はありません。しかし、誰かが始めなければ進まないというのも事実です。もし、導入を検討するのであれば、一緒に技術開発から行っていく覚悟をもって取り組むとよいでしょう。

参考文献

石狩市:官民連携手法による新たな軌道系交通の導入可能性調査報告書
富谷市:都市型自走式ロープウェイの導入可能性調査業務報告書
国土交通省:地域公共交通の「リ・デザイン」の実現に向けた 新たな制度的枠組み等に関する基本的な考え方