通学でのかしこい送迎の使い方を考えよう

担当:西堀泰英(大阪工業大学)

通学は,人生のある時期に誰もが経験します.それは個人にとっては過ぎていくものです.いい思い出も悪い思い出も,いずれ過去のものとなります.ですが,通学する人がいなくなることはありません.
現在,通学は様々な問題を抱えています.個人には一時的な問題であっても,社会全体でみれば常に一定数が通学問題に直面し続けているのです.また,通学の問題は多岐にわたるため,公共交通や教育など特定分野の対策では問題が積み残しになることになります.これらのことについて,3回に分けて取り上げます.
今回はまず,地方都市圏(東京,京阪神,中京の三大都市圏以外の都市圏)の通学の実態を確認し,その中でも送迎を取り上げます.
なお,この連載記事では,地方都市やその周辺の高校生に焦点を当てて考えます.

地方都市圏では約13%が自動車(同乗)で通学

全国都市交通特性調査(全国PT)参考文献1の結果を用いて,通学目的の代表交通手段(以下,交通手段)構成比を確認します.下の図は2021年調査の結果です.ここでの通学は高校生だけでなく全ての通学の結果です.三大都市圏でも地方都市圏でも徒歩が5割以上を占めるのは小学生や中学生などの通学を含むためです.
ここで注目したいのは,地方都市圏です.自動車(同乗)が12.7%であり,鉄道(6.8%)の2倍弱のシェアを占めています.自動車(同乗)は,すなわち送迎ですね.通学を家庭が支えている部分が小さくないことが分かります.徒歩の多くが小中学生と考えると,高校生や大学生では,自動車(同乗)の割合はさらに高いものになっていると言えます.

図 2021年全国PTの通学目的代表交通手段構成比
(参考文献1を元に筆者作成,自動二輪車は原付を含む)

送迎は家庭や地域社会に苦労や負担をかける

詳しくは別の機会に触れますが,通学の問題は実に様々です.筆者が2025年に愛媛県の高校生(進学を控えた中学3年生を含む)の保護者を対象に調査したところ,コメント欄に様々な苦労が書き込まれていました.その中で送迎に関するものには下のようなことがありました.

表 通学に対して保護者が感じていることのうち送迎に関係するものの抜粋(筆者調査結果)

分類回答の例(要約しています)
家庭の苦労「親は,ごはんの用意と送迎しかできないからがんばる」
「送迎で待ち合わせるための駐車場代が負担」
「定期を持つ子に頻繁に送迎を頼まれるため定期代がもったいない」
仕事面の苦労「送迎は仕事面で大変だが仕方ない」
「送迎のため非正規でしか働けない」
地域への負担「送迎の車で毎朝大渋滞」
「自転車通学生と送迎の車との事故が心配」
地元から離れる「子が送迎されることを申し訳ないと思っているのがわかる.子が進学後に便利な場所での生活を希望して地元を離れても仕方ない」
送迎が必要な時がある「酷暑や記録的豪雨の時,ケガや体調不良の時,部活や塾などで遅くなった時,は送迎が必要」
「運行本数が少ないため毎日駅で1時間以上待つ子を思うと送迎してやりたい」
送迎を振り返って「送迎していた当時は大変だったけれど,今思うと貴重な時間だった」
「上の子は送迎が必要な高校で大変だった.下の子がどこに進学するか不安」

送迎は,家庭や地域に苦労や負担をかけていることが読み取れます.送迎のより幅広い問題は「送迎人生」にあります.

送迎がもたらす悪循環

地域への負担には,送迎が増えることで公共交通の利用者が減少し,減便や廃止につながりかねない問題もあります.送迎が増えることが公共交通の衰退を招き,さらに送迎を増やすことにつながる負のスパイラルの関係にあると言えます.また,高校生が大人になった時に暮らす場所として,送迎負担がない地域を選ぶようになると,人口流出が起こり地域はますます衰退してしまいます

通学でのかしこい送迎の使い方を考えよう

送迎の負の面を書いてきましたが,送迎が必要な場合があることも考える必要があります.反対に,さほど必要性がなくても送迎していることがあるかもしれません.また,送迎が家族の絆を深めるものである側面もありますが,少なくとも送迎をするしないを選択できる環境が大事です.

問題は,送迎するかしないかや,送迎が必要な場合にどのように送迎するかの判断が,家庭に委ねられていることと考えます.
この問題には,モビリティ・マネジメント(MM)参考文献2の考え方が活用できそうです.MMはご存じの方も多いと思いますが,簡単に紹介すると,過度に自動車を使うと渋滞や環境や健康の問題があるため,過度に自動車に依存しない「かしこいクルマの使い方」を促すものです.送迎の問題を減らすため,かしこい送迎の使い方を考える必要がありそうです.

また,何らかのルールや規範を定めることも一案です.例えば,自転車通学のルールを定めている学校があります.「自転車通学は自宅が学校から2km以上離れていないと認めない」などです.送迎のルールを検討する際は,代替手段の有無や道路環境などの地域の実状に応じたものとすることが求められます.

学校までの送迎を例にルールのイメージを考えてみます.代替手段がある地域では,送迎は警報級の異常気象時や,ケガや体調不良時に限ることも考えられます.代替手段がない地域でも,学校周辺地区の迷惑とならないよう,そして通学時の交通安全を守るためにも,乗降を学校周辺ではせず,学校から離れた場所で行うことも一案でしょう.

これらのルールの運用は,むやみに学校の負担を増やさないためにPTAや学校運営協議会参考文献3が担うことを考えるべきでしょう.そして,定められたルールを守るという「規範」を持つことができれば,ルールを運用する際の負担を軽減できます.

送迎に関する家庭や地域の苦労や負担を減らすために,一人ひとりができること,そして地域で取り組むべきことを考え,実践していくことが求められます.

参考文献1:全国都市交通特性調査(https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000033.html)
参考文献2:モビリティ・マネジメント(https://www.jcomm.or.jp/mm/)
参考文献3:学校運営協議会制度(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/index.htm)