【コラム】スコットランド、すっとこどっこい訪問記(2)

担当:福本雅之(合同会社萬創社)

 前回からかなり期間が空きましたが、待望の(誰が?)第2弾。今回は、スコットランドの公共交通の運賃について記してみます。

 スコットランドに限りませんが、英国の公共交通の運賃は高いです。

 アバディーン市内を主に運行しているのFirst社の路線バスの場合、市内ゾーンの運賃は片道2ポンドなので、日本円にすると約400円。円安であることを考慮しても高いという印象を持ちますが、むしろ日本が安すぎると考えた方が妥当でしょう(なお、手元の記録によると12年前も初乗り2ポンドなので運賃は変わっていません。ただし当時のレートは1ポンド160円)。

 運賃は現金でも支払えますが、現金でバスに乗る人はほとんどいません。そもそも、高齢者・障害者はスコットランド政府から公共交通パスが支給されているため運賃は無料です。一般客の支払は、クレジットカードも使えますが、多くの利用者はスマホアプリを利用していました。

 車内で決済する場合であっても、スマホアプリを利用する場合であっても、通常の運賃支払い(Single)の他に、1dayチケットや、Groupチケットなどが各種設定されています。この手の割引チケットは会社によってさまざまに設定されており、アバディーンの場合、市内路線中心のFirstは1日乗車券や1週間乗車券という乗り放題券が充実しているのに対して、郊外への長距離路線の多いStagecoachは往復乗車券の設定が充実しています。

 市内の移動も、都度、Singleで支払っていると、あっという間にバス代で1000円を突破してしまいますので、グループで移動するとなるとなかなかの金額になってしまいますが、アバディーンのFirstの場合、Group1Dayチケットは13.5ポンド=2700円で5人までが市内乗り放題になりますから、4人以上だと往復するだけで割安になります。1人用の1Dayチケットも5.3ポンド=1060円なので、3回以上乗るならこちらの方がお得です。

 面白いのが、エディンバラのトラムの運賃設定です。市内の利用については、初乗り2ポンド、1日券が5ポンドという設定で、これは他の都市と比べても違和感ありません(ちなみに、ファミリーの1日券は10.5ポンドなので、夫婦+子供となるとファミリーチケットを買った方がお得)。

 ただ、エディンバラトラムは空港アクセスを担っており、市内~空港の片道運賃は7.5ポンドとかなり高めの設定になっています。これが、空港への往復切符となると、9.5ポンドとなり約3割の割引率になります。なお、復路券はいつでも(any day)使える設定となっている点も興味深いです。この往復券は空港発の場合も買えるようですので、知っていると得ですね。

 なお、エディンバラトラムはホーム上の券売機でチケットを買うかスマホアプリで決済して乗車する信用乗車方式ですが、車内改札は相当頻繁(見た感じ、全区間ではないが、全便では実施している)に来ますので、不正乗車する余地はありません。

 1日券やグループ券の運賃設定からうかがえるのは、使えば使うほどお得感を感じるような設定が意識されていることです。

 1dayチケットを買ってしまうと、市内乗り放題になるので、買い回りなども生じるでしょうから、中心市街地の回遊性向上には間違いなくつながると思います。そもそも、アバディーンくらいの都市であっても、バスの本数は各系統とも10~20分に1本は走っており、それらの系統が中心市街地には集中していますから、それこそひっきりなしにバスは走っていて、中心市街地の中での移動ではバスをあまり待つ必要もなく、1日券も「使いで」があります。中心市街地に向かう場合は、とりあえず来たバスに乗ってしまって、適当に乗り換えたり途中下車したりしながら目的地を目指すこともできます。

 ただ、そうはいっても、家族の場合は中心市街地までクルマで行って駐車料金を払った方が安いということには変わりなさそうなのですが(アバディーンの場合、中心部のショッピングセンターであるユニオンスクエアの駐車場は2~3時間で5ポンド)。この場合、ショッピングセンターの中で人の移動が留まってしまい、中心市街地への波及効果は薄そうです。

 なるべく中心市街地へ公共交通できてもらう方が、街の元気につながるのでしょうし、そのためには、本数や運賃設定などいろいろ考えることがあるなと改めて考える機会となりました。