公共交通が提供する6つのサービスとは何でしょうか?

土井 勉(一般社団法人グローカル交流推進機構)

担当者
担当者

利用促進に取り組むためには、どんなサービスを重視すれば良いのでしょうか?

それはね
それはね

重視するサービスの内容は地域特性や事業者の皆さんの状況によって変わります。ここでは、サービスを構成する要素を6つに整理して、その全体像を紹介します。

地域公共交通のサービスを構成する要素の全体像は

バスの収支の改善や、運行に対する公的な支援を継続するためにはも利用者の増加が大切で期待されます。そのためには利用促進に取り組む必要がありことになります。

利用促進には、①他の交通手段からの「転換」や目的地の「転換」により地域公共交通の利用を行う、②潜在的需要の顕在化や観光など他のエリアからの流入によ期待する「創造」の2つがあります。

こうした利用促進を進めるためには、接遇を改善したり、ダイヤ調整をしたり、時刻表を配布したり…と様々な活動に取り組むことになります。これら様々な活動こそがサービスの向上の取り組みになります。ただ,個々のサービスだけに目がいくと他の重要なサービスについての取り組みが不足するかも知れません。サービスを構成する要素の全体像を把握することが必要です。ここでサービスを構成する要素の全体像を示すと図のようになります。

図 公共交通のサービスを構成する要素の全体像

では個々の要素サービスについて概要を見ていきたいと思います。

安全と接遇

利用者は安全については信頼をして、バスなどの公共交通を利用しているわけですから、交通事業者は、車内事故の防止だけでなく、種々の状況に対しても柔軟に対応できるように日々の取り組みを行っていると思います。

また、安全な運行を前提として,乗客に対するきめ細かいケアなどの接遇の質は、利用者がマイバス意識を感じてもらうための重要な要素になります。

特に、現在のようなコロナ禍の状況においては感染防止にもしっかり取り組んでいることも、安心して地域公共交通を利用してもらうために不可欠なことです。

地域公共交通の6つのサービスの6つの要素の概要

6つの要素サービスについて詳述することは避けて、主に重要と考えられるものに絞ってコメントをしたいと思います。

路線・系統

「適切な路線の設計をやりましょう」と言うことは簡単ですが、実際にはどんなことに気をつければ良いのでしょうか。

古くから維持されてきた伝統ある路線では、その路線の存在を前提として生活や活動が根ざしている可能性がありますから、ルートなどを変更することには慎重であることが望まれます。

また、バイパスができたときにことでバスの路線も旧道からバイパスにルート変更すると、集落からバス停までの距離が大きくなり過ぎて、人々が使うことができないバス路線になることがあります。

長大路線は収支を悪化させる要因になります。いろんなことを配慮し過ぎると長大路線になりがちでますが、収支は悪化してしまいますすることを考えておく必要があります。ある都市では1運行あたり45分以上の時間を要する路線は全て赤字でになっていました。このあたりの路線長が一つの目安になると思います。

さらに、環状路線、特に一方循環の路線は利用者がの往復で利用しづらいことからが期待できないことが多く、避けた方が無難でしょう良い場合が多いと思います。あるいは、集落に寄るために幹線道路から出たり入ったりするの右左折が多い路線では、速達性が阻害され、利用者に長時間乗車を強いることになるので避けた方が良い場合があります。

一方で坂道など高低差がある住宅地などの場合には、バスなどの出番が期待されることになりそうです。

バス停・乗換・ターミナル・駅

地域公共交通の車両と利用者の物理的な接点ですから、できれば雨風を避け、座って快適に待つことができ、必要な情報が得られる場所であることが期待されます。

危険なバス停問題など言いたいことは様々ありますが、それは別項に譲って、ここでは「バスベイ」について少し語っておきたいと思います。

バスベイとはバス停のある場所の歩道に切れ込みを入れてバスを停めるスペースのことです。なぜ、バスベイをつくるのか、というとバスが停車することで後続の自動車の渋滞を防ぐためだと考えられます。バスベイは、自動車から見ると邪魔なバスが停まっている間に横をすり抜けることで、マイペースで運転ができるために必要な施設になると思います。

しかし、バスベイを整備することで歩道が狭くなり、バスを待つ人や歩道を通行する人にとっては不愉快なことになります。さらに停車しているバスが発進する際には、車道に戻るために自動車の走行が途絶えるまで待つことが必要になります。バスの走行時間が遅延する原因の一つになります。

全く逆の発想で,バス停を車道側に突き出すテラス型バス停もあります(京都市の四条通)。バスの運行を優先して、後続の自動車はバスが停まると待つことになります。

このようにうしたことから、バス停のあり方は、限りのある道路空間で何を重視する地域なのかを示すことにもなります。これからも様々な工夫をすることが期待されます。

さらに、駅とバス路線の接続については、キス&ライドの自動車がバスの走行を阻害しないように動線の工夫や交通規制などの検討が必要になることがあります。

ダイヤ(頻度・所要時間・接続)

ダイヤについては、鉄道や幹線バスとの接続を考えることが重要です。特に終電などとの接続ダイヤを考えておくことは、バスの利用促進のためには重要になります。

それを踏まえて、まずはパターンダイヤを志向することが必要です。利用者から見ると一つの発車時分を覚えると、あとは時間をスライドさせるだけで希望するバスに乗ることができるのですから、使い勝手が向上します。

また、運行の所要時間を可能な限り短縮することが利用を促進するためには必要です。バスの運行時間を延ばす原因になるのは①走行時、②交差点、③バス停になります。①の走行時の速度向上策は、優先レーンや専用レーン化、沿道の駐停車の禁止などが必要となります。しかし,実際にはできるところは限定されていると思います。②の交差点では、PTPS(公共交通優先信号)などの導入等がありますが、交差道路の関係で導入が難しいところもあります。また、路線のところでも書きましたが、右左折はできるだけ減らしたいですね。③バス停では、乗降客数からの運賃収受と出口への移動に時間がかかります。さらに、バス停のところで述べたバスベイからの発進についても時間がかかります。こうした障壁を取り除いていくことがサービス向上には必要となります。

運賃

運賃はいまだに「ワインコイン」といわれる人たちがいます。確かに地域公共交通で収支を考えない場合は、それでも良いと思います。しかし、収支についても考える場合には、地域公共交通を運行するための費用も考えて運賃の設定をすることが不可欠です。でないといつまで経っても収支が改善しない要因になります。

「バスを走らせるには、どのような費用が必要でしょうか?」をご覧いただき、バスを運行する際の費用についての値頃感を養っていただければと思います。

また、運賃は自路線だけで移動が完結するのではなく、他のバスや鉄道との乗り換えが必要な場合も少なくないと思います。その際に双方の地域公共交通で初乗り運賃を支払うことで、一気に移動コストが上昇することになります。移動を支える仕組みとして、こうした運賃の仕組みに対してのサポートを考えることも、利用促進を図る場合に重要な施策になります。

車両

バリアフリーのためのにフルフラットな車両(実際には車両後部は段差が多いのですが)でも、杖を持つ高齢者の人たちは下車ができないので、先に杖を外に投げて、よっこらしょと降りていくことがある、という話を聴くと車両の改造だけでなく、周囲にいる人達のサポートも大事かと思います。

とは言え、まだまだ様々なバリアがある車両が多いです。それと、地域主体など取り組まれている場合の移動手段として多く使われているハイエース型の車両についても、もっと使い勝手の良いものになるような開発も期待したいと思います。

車両の導入については,あらかじめ導入するものを決めるのではなく、地域の状況や人々の移動目的にふさわしい車両の選定と、その運営の方法について検討することで、どんな車両を導入するのかを決めることが望ましいことです

情報提供

よく言われることですが、「情報が届いていないと、存在していないことと同様」というのは真実です。

野村文吾社長率いる十勝バスは帯広市を中心に路線バスを運行されています。ここで住民の人たちと対話を重ねてわかったこととして,「住民はバスが不便だから利用しないのではなく,不安だから利用しない」という名言を述べておられます。

では、不安を解消するために、どのようなことに取り組まれたのでしょうか。それが利用者の移動目的(例えば,通院や買物など)に合ったバスマップの作成や、こうした材料を持って、戸別訪問を実施され地域の人たちとの対話を重ねています。その結果として、2011年まで利用者は減少傾向でしたが、以降はV字回復を実現されています。

ここで述べた地域公共交通のサービスのうちの5つを適切にデザインし、それを多くの人々にわかりやすく伝えていくことが情報提供です。ということは、モビリティ・マネジメント(MM)の一環にでもあります。自治体のHPに情報を掲載しただけでは、十分な情報提供に取り組んでいるとは言えません。

サービスの6つの要素はバランスよく

上記の6つの要素サービスはバランスよく設計することが大事です。ダイヤが素晴らしくても情報提供が中途半端であれば,利用促進の達成も容易ではありません。6つの要素サービスについて意識をして、新たな路線の導入や,現在の運行状況の確認をすることで,目的とする利用促進,そして地域の人々の生活を支える地域公共交通の運行が前に進むことになります。