GTFSデータでバスの運行頻度路線図が作れると聞ききましたが、手順は難しいのでしょうか?
QGISとそのプラグインを使うと簡単に作成できますよ
はじめに
先日の公共交通トリセツの記事でGTFSデータの活用方法を幾つか紹介しましたが、その中で「公共交通の運行本数を可視化する方法」について、具体的な作業手順の質問を何件か頂きました。今回の記事ではその具体的な方法を紹介いたします。
私も、GISソフトは全く触っていない初心者でしたが、この方法を覚えてからGISソフトに興味を持ち、インターネット等で様々な操作方法を身に付け、今では地域の分析等に活用できるようになりました。皆さんも是非この機会に一度お試しください。
QGISを利用して、運行頻度図を表示する手順
利用するソフトウェアとデータについて
運行頻度路線図を作るためには、GTFSデータに含まれる公共交通機関の情報を地図上で可視化する必要があります。GTFSデータに限らず何かしらの位置情報を持ったデータを地図上で可視化したい時は、GIS(Geographic Information System)と呼ばれるソフトウェアを使うと便利です。今回は無料で使えて国内でも普及もしているGISソフト「QGIS」と、そのプラグインである「GTFS-GO」を利用します。
注意点としては「QGIS」をインストールするPCには、メモリが最低でも8GB以上、ストレージの空き容量を4GB以上確保しておいてください。また、インターネット経由で地図を参照する事もあるので、インターネットに接続できるPCの方が望ましいです。
手順1:QGISのインストール
QGISは、こちらのWebサイトから入手しインストールを行ってください。インストール手順についてはHP等で詳細なマニュアルが公開されていますので、そちらを参考にしてください。
手順2:プラグイン「GTFS-GO」のインストール
運行頻度図は「GTFS-GO」というプラグインを利用すると簡単に作成できます。まずはプラグインのインストールをしてみましょう。
- QGISを起動させ、メニューバーにある「プラグイン」を選択、その後「プラグインの管理とインストール…」を選択し、プラグインの一覧が表示された画面を表示してください。
- 検索窓で “GTFS-GO” と入力し候補が表示されたら、「GTFS-GO」を選択し右下のボタンよりインストールを行ってください。
- 画面上部に「プラグインのインストールに成功しました」と表示されたら、この画面を閉じてください。
手順3:GTFSデータのDL
運行頻度路線図を作成したい公共交通機関のGTFSデータをDLしてください。データはオープンデータとして公開されているものでも、自分で作成したデータでも構いません。オープンデータを利用する場合には、以下のWebサイトにデータがまとまって掲載されているのでご活用ください。
手順4:QGIS上で地図を表示
次にQGIS上で下図となる地図を表示してみましょう。今回は地理院地図の淡色を追加する手順を説明します。※インターネットに接続されているPCを利用してください。
- 左側の「ブラウザ」パネルから、「XYZ Tiles」を右クリックし、「新規接続」を選択してください。
- 表示された画面で、以下のように入力し、最後にOKを選択してください。
- 名称:地理院地図(淡色)
- URL:https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/pale/{z}/{x}/{y}.png
- 「ブラウザ」パネルの「XYZ Tiles」を開くと表示される、「地理院地図(淡色)」を、画面左下の「レイヤ」パネルにドラッグしてください。
※「ブラウザ」パネル自体が表示されていない場合は、メニューバーの「ビュー」から「パネル」を選択し、出てくるメニューの中から「ブラウザ」を選択します。
- 「レイヤ」パネルの「地理院地図(淡色)」を右クリックし、「レイヤの領域にズーム」をクリックしてください。マウスのホイールを上に回して世界地図が表示されたら、そのままマウスを使い日本付近を拡大して表示してみてください。
手順5:GTFS-GOを使ってバスの運行頻度図を作成
ここまで準備が進むと、次がメインとなる運行頻度図を作成する作業となります。
- メニューバーにある「Web」を選択後に、「GTFS-GO」を選択しプラグインを起動させてください。
- 「GTFSデータを選択」にて、【手順3】でDLしたGTFSファイル(ZIP形式)を選択してください。
- 表示されているGTFS-GOの画面で、以下のように内容を入力または選択し、最後に「QGISに読み込む」を選択してください。
- 出力先フォルダ: PC内の任意のフォルダを指定してください。
- 経路と停留所を描画:今回はチェックを外してください。
- 運行頻度を集計:チェックを付けてください。
- 運行日で抽出:チェックを付け、運行頻度を集計したい日付を選択してください。
- stopを名寄せする:チェックを付けてください。
- QGISのメイン画面に運行頻度図が表示されます。
おまけ:QGIS上でメッシュ人口データを表示する方法
地域を運行する公共交通機関の可視化と合わせて人口メッシュデータを重ねると、交通空白地域の可視化も簡単に行うことができます。おすすめの手順を以下に簡単にまとめておきます。
手順1:簡易100mメッシュ人口データのDL
以下のWebサイトより、表示したい地域の簡易100mメッシュ人口データをDLしてください。
手順2:メッシュ人口データの取り込み
DLしたファイルを展開(ZIPファイルを解凍)し、展開したフォルダ内に含まれる、拡張子が「.shp」のファイルを、QGISの「レイヤ」にドラッグしてください。
※ファイルをドラッグした際に確認画面が表示されたら、画面右下のOKを選択してください。
手順3:レイヤの順番を調整
レイヤの順番が以下の通りになるよう、レイヤをドラッグし順序を調整してください。
- 「feed」 ※GTFS-GOで作成したレイヤ
- 「100m_mesh_pop2020…」 ※人口メッシュを可視化したレイヤ
- 「地理院地図(淡色)」
手順4:人口メッシュレイヤの色付け
人口の多寡を色の濃淡で表現すると、地域の人口分布の状況が把握しやすくなります。
- 「100m_mesh_pop2020…」レイヤを右クリックして「プロパティ」を選択したあと、「シンポロジ」を選択してください。
- 色の付け方のルールが「単一定義<single>」となっているので、「連続値による定義<graduated>」に変更してください。
- 「値(Value)」を「1.2 Pop T」に変更してください。
- 「モード」を「丸め間隔(Pretty)」から「等間隔分類」に変更してください。
- 最後に画面下部のOKを選択してください。
- QGISのメイン画面で100mメッシュあたりの人口分布の状況が色の濃淡で表現されます。
さいごに
今回の記事では、QGISやGTFS-GOの機能の一部を紹介しましたが、実際にはそれぞれのツールには他にも機能があります。特に、QGISに関しては今回紹介したのはごく一部で、まだまだ使える機能がたくさんあります。QGISの使い方はインターネット上にも多くの情報が溢れていますし、QGISを日頃から業務で使い操作に慣れた人は様々な機能や使い方を知っています。また、各地で講習会なども行われています。
今回の記事をきっかけにQGISやGISに興味を持った方がいたら、ぜひ周りにQGISを使える人がいないか調べてみてください。その人達と勉強会を開催したり、または近くで行われているワークショップに参加してみることをおすすめします。データの可視化方法は無限にありますので、自分だけで考えるよりも他の人とアイデアを出し合うことで新しいアイデアが浮かぶこともあります。ぜひ実際に試してみてください。
参考資料
- MIERUNE「公共交通機関のデータを可視化する「GTFS-GO」を使ってみよう!」https://www.mierune.co.jp/blog/posts/k9s2tkoapgc
- Quita「QGISと「GTFS-GO」でGTFSを可視化しよう!」https://qiita.com/Kanahiro/items/976900c4e5542acfe29d