協議会で市民委員の発言を促す工夫にはどのようなものがありますか?

担当:福本雅之(合同会社萬創社)

協議会に出ても専門的な話ばかりで何も意見が言えないなぁ

意見を言いやすい会議の進行を工夫することで市民委員の意見を促したいものです

 地域公共交通会議や地域交通協議会には、関係行政機関や交通事業者の他に、市民や利用者代表の委員が参加しています。一般の市民になじみのない専門用語が多く飛び交う会議の場においては、こうした市民委員が議論に参加しづらいのか、あまり積極的に発言をされないところが多いように思われます。

 しかしながら、地域の状況に応じた公共交通サービスの実現を図るという地域公共交通会議や地域交通協議会という制度の趣旨に照らし合わせて考えれば、市民委員からは積極的な発言がなされることが望ましいといえます。では、どのような工夫を行えば良いでしょうか?

座長の進め方の工夫

 会議の進行は協議会の座長が行いますが、議題に沿っての資料説明を事務局に求め、質疑で手が上がらなければそのまま採決に進む、という進め方をする座長も珍しくありません。

 専門知識のない市民が、自治体や事業者の用意した資料に対してその場で質問をすることはハードルが高いため、このような進行ではなかなか意見を述べるどころか、単純な用語の意味などの質問もしづらいと言えるでしょう。

 座長は形式的な進行をするのではなく、市民目線で見たときにわかりにくい用語や制度があった場合には、適宜補足の解説をしたり(自分自身でできない場合は、詳しい人に解説を求めると良い)、あるいは、自分自身が「この用語の意味を少し説明してください」という風に質問をするなどして、市民委員にもわかりやすい進行を心がけるべきです。その際、(もし仮に自分が知っている内容であったとしても)自ら単純な言葉の意味を聞くなどして、質問するハードルを下げるようなことも有効です。

 発言を求めても質問や意見が出ない場合には、「この協議内容について●●委員はどのように思いますか?」などと指名して意見を求めることも行いましょう。ただし、会議中に突然指名されると面食らう可能性もあるため、会議の開始前に「この案件は、●●委員に関係することなので、会議中に意見をお願いします」などと事前に指名することを伝えておくなどすると良いでしょう。

 さらに、委員から発言がされた場合には、その内容がどういうものであっても否定するようなことは言わずに、「ご意見ありがとうございます。今の内容は~~~ということですね。」と、お礼を述べた上で内容を簡潔にまとめ、きちんと意見を受け止めているという態度を示すことが望ましいでしょう。内容を簡潔にまとめることは、事務局が回答を準備する時間を与えることにもなり、有効です。

 協議事項についての採決を行い、協議が調った際には委員全員で拍手をするようにして参画意識を高める工夫も考えられます。ただし、採決自体については挙手にして賛否の数を明らかにする方が良いでしょう。

 もし、この記事を読んでいるあなたが座長を行う立場の人であれば、以上のようなことに気をつけると市民委員の発言を促せるようになると思います。一方で、この記事を読んでいるあなたが事務局を行う立場の人であるならば、上記のようなことに気をつけて会議を進行して欲しいと座長にお願いすると良いでしょう。

会議の進行の工夫

 多くの協議会での会議次第を見ると、

  1. 開会
  2. あいさつ
  3. 協議事項
  4. 報告事項
  5. その他
  6. 閉会

という流れになっていることがほとんどです。

 この中で、市民委員を含めて委員から自由に意見を言う時間が設けられるのは、「5.その他」の時間であり、それ以外の項目では、発言者が決まっていたり、事務局からの資料説明に対する質疑が行われたりします。

 標準的な協議会は2時間程度で行われますが、「5.その他」に至る頃には会議開始から2時間弱が経過して参加者も疲れているため、ここで自由に発言を求められたとしても、わざわざ時間を費やして意見を言おうと思うのは、よっぽど伝えたいこと(多くの場合は、要望か苦情)がある場合に限られてしまうと考えられます。

 そこで、市民委員が意見を言いやすくする会議の進行の工夫として、会議の冒頭に意見交換(フリーディスカッション)の時間を設けることが有効です。

 つまり、会議次第を

  1. 開会
  2. あいさつ
  3. 意見交換
  4. 協議事項
  5. 報告事項
  6. その他
  7. 閉会

とするわけです。

 さらに、会議の案内文書を送付する際に、「会議冒頭にてフリーディスカッションの時間を設けますので、どんな些細なことでも結構ですから、公共交通に関するご意見を用意して来てください」というような一言を添えておくとより効果的です。

市民委員の意見は何よりも優先すべき

 やや誤解を招くかもしれませんが、国への補助申請に必要な協議や、道路運送法上必要な協議は、事務局と関係行政機関といった専門家同士が問題がないと判断できる内容であれば、協議会で議論すべき論点がさほどあるわけではありません。

 一方で、市民目線での意見や疑問の中には、バスを使ったときの感想、運転手への感謝、バス停のちょっとした不満、サービスへの素朴な疑問などがあると思いますが、これらは公共交通のサービス改善に直結するヒントを持っている可能性があります。どんな些細なことであっても、協議会の場で意見を言ってもらえば、その場にいるメンバーの中から改善のアイディアが出てこないとも限りません。

 協議会は、制度上や手続き上必要だから開くものではなく、地域にあった輸送サービスを実現するために開くものであるという原点に立ち返った場合、市民目線での意見を聞く場として機能するようにすることにはもっと心が砕かれてしかるべきではないかと思います。