GTFSデータをGoogleマップ掲載以外に使っていますか?
えっ、GTFSデータってGoogleマップ専用のデータじゃないの??
GTFSデータはGoogleマップに情報を掲載するための専用データではありません。
日頃からGTFSデータの作成方法や活用方法を事業者や自治体担当者の皆様に教えている立場として、せっかく作成したGTFSデータがGoogleマップへの情報掲載にしか利用されていない状況を見かけることが多く、とても残念に感じています。
GTFSデータが用意できると、Googleマップ以外にもYahoo!路線情報やNAVITIME等の国内経路検索サービスにも公共交通機関の情報を掲載する事ができます。各サービスへの掲載を希望される方は、コチラの資料に書かれている各社の問い合わせ先まで連絡をしてみてください(Yahoo!路線情報については、ヴァル研究所が窓口となります)。
そして、経路検索サービス以外にも様々なデータの活用方法がありますので、今回はその例を紹介いたします。
GTFSデータの活用方法
GTFSデータの活用方法として、今回は3種類を紹介します。
- 利用者への情報提供への活用
- 分析用データとしての活用
- システム連携の基礎データとしての活用
利用者への情報提供への活用
GTFSデータを活用することで、経路検索サービス以外にも、駅構内や病院、バス待合所などに設置したデジタルサイネージで公共交通機関の時刻の案内を行ったり、GTFSデータから作成したマップを配布したりHPに掲載するといった情報提供を行うことができます。中でもデジタルサイネージを用いた情報提供については、GTFSデータを自ら整備した自治体や事業者に限り無償で利用が可能なソフトウェア「その看板」の普及もあり、全国に事例が広がっています。
その他にも、タブレット端末を用いて窓口などでバス運行時刻の案内を行うといったことも可能です。例えば、新潟県湯沢町では、冬季シーズンに路線バスとスキー場や宿泊施設が運行する送迎バスのGTFSデータを準備し、そのデータを表示するための専用HTMLコンテンツを用意することで、スキー場や宿泊施設のフロントに設置したタブレット端末で観光客へのバス時刻情報の案内を行っていました。
山梨交通のデータを活用したバスマップ
バス情報の可視化(主に住民向け)
串間市民病院(宮崎県串間市)
バス×鉄道の可視化
明知鉄道恵那駅待合所内(岐阜県)
バス✕スキー場ゲレンデ情報の可視化
湯沢高原スキー場(新潟県湯沢町)
バス情報の可視化(主に観光客向け)
沼津港(静岡県沼津市)
システム連携の基礎データとしての活用
GTFSデータは、停留所の位置情報や路線の情報、運行ダイヤに関する情報も含まれているため、同様の情報の用意が必要になるバスロケーションシステム等の導入に活用することができます。注意すべき点としては、導入を検討しているバスロケーションシステムがGTFSデータの取込みに対応しているか確認が必要です。バスロケーションシステムのメーカーのページに「GTFS対応」と謳われていても、「GTFSリアルタイム」データの出力にしか対応していない場合もありますので注意が必要です。
さらに、ICカードや決済システム導入時に基礎データとしてGTFSデータを活用することを強くお勧めいたします。理由は、それぞれのシステムから出力されたログデータを分析しようとした場合、ログデータとその他のデータでコード体系が異なっていると分析のデータ加工処理に手間がかかってしまい、作業の妨げとなるためです。
また、GTFSデータと他のシステムのコード体型を合わせておくと、駅や停留所の緯度経度情報がそのまま利用でき、GISソフトなどを使い地図上でのデータの可視化を簡単に行うことができるメリットもあります。
山形鉄道フラワー長井線乗降客数(平成元年度)
山形鉄道フラワー長井線乗降客数(令和元年度)
※データ出典元:『山形県の鉄道輸送』令和2年度版
分析用データとしての活用
GTFSデータが手元にあればGISソフトを用いて公共交通の運行本数が簡単に可視化できます。お勧めのツールは、QGISと、そのプラグインである「GTFS-GO」です。使い方を覚えれば誰でも運行頻度の可視化が5分程度で行えるようになります。
佐賀県バス運行頻度図(全域)
佐賀県バス運行頻度図(佐賀駅周辺)
GISソフト上で人口の集積情報と組み合わせれば、交通空白地域の可視化も行えます。
中津川市バス路線と人口分布の可視化(広域)
中津川市バス路線と人口分布の可視化(中心部)
※データ出典元:地域・交通データ研究所「令和2年簡易100mメッシュ人口データ」
また、ICカードの実績データ等から駅間(停留所間)の乗降人員を用意できれば、GTFSデータと組み合わせてGISソフト上で可視化を行い、区間ごとの利用状況を地図に表現することも可能です。
※駅間の実績データが公開されているデータが手元にないため、オープンデータとして公開されているロンドン市交通局の駅間乗降人員を可視化したサンプルを以下に示します。
ロンドン市交通局駅間乗降人員の可視化
※データ出典元:TRANSPORT FOR LONDON「Transport Data Service」http://crowding.data.tfl.gov.uk/
青森市内繁華街から21時にバスで帰宅できるエリア
広島学院高校に自宅からバスで通えるエリア
その他にも、分析を実施するためには技術的な知識が少し必要になりますが、GTFSデータを用いて「公共交通機関の到達圏分析」も行うことができます。これは任意の地点から(まで)指定時間内に到達できる範囲を地図上に可視化できるもので「自宅から公共交通で通学できるエリア」「高校まで公共交通機関で通学できるエリア」「繁華街から公共交通機関で帰宅できるエリア」などを図示する事が可能です。
応用的な使い方としては、地域で計画している新しいバス路線等のGTFSデータを先行して用意して到達圏分析を実施すれば、その路線が加わったことで地域の公共交通機関による到達圏がどのように変化するかのシミュレーションを行う事も可能です。
さいごに
今回お見せしたした分析の手法は、地域で運行する公共交通機関のGTFSデータが全てそろっていないと実勢に合った分析が行えないため、まずは地域でデータを揃えることが重要となります。また、地域でデータがそろっていると経路検索サービスでも実勢に合った検索が可能となり、利用者の移動を助ける事できます。
このように、GTFSデータの整備は、Googleマップへの対応だけでなく、複数の経路検索への対応や、サイネージなどでの情報発信への活用、さらにはデータ分析や可視化にも活用可能です。せっかくGTFSデータを作ったのですから、このような様々な活用についても検討してみてはどうでしょうか。
参考資料
国土交通省「標準的なバス情報フォーマット」解説(初版)
https://www.mlit.go.jp/common/001282718.pdf
山形県バス協会「山梨県の路線バス情報のデータ」
http://opendata.busmaps.jp/
佐賀県の路線バス情報のデータ
GTFS-JP東海地方(愛知・岐阜・三重県)のGTFS・GTFS-JPオープンデータ一覧
公共交通トリセツ「GTFSってなんですか?」