土井 勉(一般社団法人グローカル交流推進機構)
私たちの活動が最近停滞気味なんですが、活動を再生するために何か良い方策はありますか?
先ずは、当初は何を目的として活動をスタートしたのかという「原点」について、メンバーの皆さんと確認し、現状を考えることからヒントが得られると思います。
移動の支援を継続していると山あり谷あり
ここでいう地域団体とは、自家用有償旅客運送やボランティア輸送などの活動を担っているNPOや様々な住民組織、ボランティア団体を想定しています。行政や事業者の活動は業務で行っているので、活動の継続は予算や人員配置で担保されていますが、地域団体の場合は各メンバーの自発的な参加によって取り組みが行われているので、意欲が続かないと活動の継続性も先細りになる場合があります。
移動の支援を行う場合は、移動になんらかの不都合がある人たちを利用者として地域団体の人たちが外出のサポートをするわけです。したがって利用者の人たちと喜怒哀楽など様々な感情の共有をすることになり、やり甲斐を感じることも多くあります。その一方で、何気ないことで意気消沈することもあり、まさに山あり 谷ありの活動を継続されている場合があるように思います。
活動の継続と停滞期
活動のきっかけは「ご近所のおばあちゃんが買い物や通院に行くことに困っている。これを何とか支えたい。そのためには自分ひとりではなく、地域の仲間と移動を支える」というような気持ちからはじまることが少なくありません。
こうした素晴らしい活動を持続的に取り組まれている地域団体も多くありますが、一方で活動の年数を経て、構成メンバーが固定化して新しい人材の参加がないなどを背景として活動が少しずつ停滞する団体もあります。
ここでは、「活動が停滞してきたときの再生策」とタイトルに書いていますが、実際には活動が停滞する前に考えた方がよい点について読者の皆様と一緒に考えたいと思います。
活動の停滞を分類すると
活動が停滞する背景には主に次のようなことがありそうです。
①移動を支える対象の状況変化
移動を支えたいと考えていた人たちが親族と同居することになり転居する等、移動を支える対象の状況変化により活動量も変化する場合です。
②活動メンバーの状況・意識の変化
当初は同じ目的で移動を支える活動に取り組んできたメンバー自身の入院や、家族の介護などより身近に助けが必要な人が出てきたなどの理由で活動の継続が困難になる場合があります。
③活動メンバーの固定化による先行きの不安
活動開始から5年経過して、メンバーの平均年齢が5歳上昇する場合などメンバーの固定化が進むと、先行きが不安になることも多そうです。
④活動資金の獲得と活動の本来の目的がずれていく問題
移動を支える活動のために、様々な助成金などを獲得する場合があります。こうした資金の獲得は活動を支えるために、極めて重要なものです。ただ、助成金が単年度など年限を限ったものだと、活動資金を継続的に獲得するために、様々な助成事業への申請などに工夫をすることがあります。すると極端に言うと助成事業に合わせた活動を行うことになり、何のために活動を行っているのかが見えにくくなり、活動の停滞をまねくことになります。
もっと他にも活動が停滞する背景はありそうです。もし皆さんも思い当たることがあれば、ご自身のノートなどに追記をいただければと思います。
特効薬を考える
先に分類した停滞の背景がわかれば、停滞の原因を取り除くことができそうです。でも、これは一人ではできないことですから、先ずは地域団体のメンバーの皆さんと今後想定される停滞について意見交換をすることが特効薬になりそうです。
意見交換の際に重要なことには次のようなことが考えられます。
①自分たちは、何のためにこの活動に取り組んだのか、という「原点」についての再確認を行うことが望ましいことだと思います。
②世代交代についての意見交換もしておくことが望ましいと思います。リーダーの方を含めて少しずつ世代交代をしていくことで、メンバーの固定化を防ぎ、新たなメンバーを受け入れやすくすることが望ましいことだと思います。
③さらに、状況変化などを踏まえて、地域団体の存続だけでなく、活動の継続についての取り組みについても意見を述べ合うことが重要かと思います。
ここで書いたことは、私の体験を整理したものですから、まだまだ狭い範囲のことが多いと思います。読者の皆様からの知識や知恵もたくさんあると思います。皆様のご意見もどこかで聞かせていただく機会があればと思っています。
なお、最も有効な特効薬は、利用者の皆様や、行政、事業者、あるいは活動団体内でも、お互いに感謝の気持ちなどの「声をかけあう」ということかと思います。