今さら聞けない!「道路運送法」の事業区分

担当:塩士圭介(日本海コンサルタント)

4条乗合?乗合タクシー?ライドシェア?何の違いがあるのか全く分からん!!

道路運送法は頻繁に細かい改正があり、用語も変化しているので、確かにややこしいですね。下記の内容を見て、最新の動向を把握しましょう!

はじめに

地域公共交通の議論や検討をするにあたり、避けては通れない「道路運送法」。日本国内で旅客や貨物を運送する際のルールを定めた法律です。特に、運賃を収受して旅客運送を行う場合、様々な事業に関する規定が設けられていますが、初めて担当する方にとっては一見して非常に分かりづらいものとなっています。

本稿では、道路運送法に基づく主要な旅客運送の区分について解説するとともに、そもそも白ナンバーと緑ナンバーの違い、道路運送法が認めている自家用車による運送方法についても説明します。

いきなり結論!

 道路運送法における旅客運送に関する各種事業の一覧表を下記に示します。特に最近(2024~2025年)はいわゆる「ライドシェア」と呼ばれる形態が登場するなど、道路運送法における自家用車の活用が大きな話題となっています。各項目については、それぞれ項目を分けて解説します。

出典:九州運輸局「地域公共交通のはじめの1歩!≪初任者用ガイドブック≫平成28年3月 をベースに著者において最新の情報を編集
https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/content/000014361.pdf

緑ナンバーと白ナンバーの違い

 ナンバーの色で、事業系の車両か自家用車で使用用途が分かれる、ということは皆さんご存知と思いますが、改めて解説すると、以下の通りとなります。

  • 緑ナンバー(事業用自動車):許可を受けた運送事業者が使用する車両で、バスやタクシー、トラックが該当します。運賃を取って人やモノを運ぶ運送は基本的にすべて「緑ナンバー」となります。
  • 白ナンバー(自家用車):個人や企業が私的に使用する車両です。基本的に、白ナンバーの車両で運賃を取って旅客を運送することは禁じられています(いわゆる「白タク」行為)。ただし、後述する道路運送法78条にあてはまる場合は例外的に有償運送が認められます。最近話題のライドシェアもこちらに分類されます。

道路運送法の主要な区分

4条乗合(バス、乗合タクシー)

 道路運送法第4条では、一般旅客運送事業を営む者は国土交通大臣の許可を要することが書いてあります。よく路線バスや乗合タクシーのことを法制度上「4条乗合」と呼びますが、貸切バスも一般のタクシーも、すべて法4条に基づく許可を得ています。

 ここで、「乗合」という意味について解説します。乗合事業の大きな特徴は、乗客それぞれが個別に運賃を支払うことです。たとえば、バスでは複数の乗客が同じ区間を利用しても、それぞれの乗客が運賃を支払います。乗合タクシーでも同様に、複数の利用者が1台の車両に乗り合って移動する場合、各自が独立して運賃を支払う場合は「乗合」事業の許可が必要です。

 この乗合事業に、定員による区別はありません。4人乗りのセダン車両であろうが、110人の連節バスであろうが、「乗客それぞれが個別に運賃を支払って緑ナンバーの車両で運送する」行為は全て「乗合事業」となります。

 乗合事業には、路線の形態に応じて、下記3種類の許可形態に分かれます。

  • 路線定期運行(路線バス等):あらかじめ定められたルートと時刻表に基づいて運行されます。都市部や地域の主要な公共交通手段として運行される路線バスやコミュニティバスの大多数はこの「路線定期運行」となります。
  • 路線不定期運行(不定期バス、デマンドバス等):特定のルートはあるものの、運行頻度が需要に応じて変動するサービスです。予約制やデマンド対応型のバスが該当します。
  • 区域運行(デマンド交通):特定の区域内でのみ運行され、利用者の予約に応じて路線や運行時刻が柔軟に対応する小規模な公共交通手段です。最近話題の「AIオンデマンド交通」の多くはこの方式となっています。
出典:北陸信越運輸局令和2年度 地域公共交通セミナー 資料 https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/content/000170311.pdf

4条貸切事業

 4条貸切事業は、特定の団体やグループが車両を貸し切り、旅客を運送する事業です。この場合、1個の貸切契約に基づき運行され、運賃は車両全体に対して支払われる(乗車する人それぞれが運賃を払わない)のが特徴です。

 4条貸切事業は、11名以上の乗客の輸送を対象とするものであり、観光バスや社員旅行のバスなどが代表的な例です。一方、11名未満の乗客を対象とする場合は、次に説明する4条乗用事業として扱われます。

4条乗用(一般のタクシー)

 4条乗用事業は、特定の利用者が指定する目的地まで運ぶ事業で、一般のタクシーのことです。こちらも許可制で、運賃や営業区域が定められています。4条乗用では1つの契約(1組の利用者グループ)に基づき運賃を支払うことになり、複数のグループが同時に乗り合って各々が運賃を支払うこと(乗合)は認められていません。

 なお、4条貸切事業と4条乗用事業の違いは、使用する車両の定員数だけです。11名以上の乗客を運送する場合は貸切事業、11名未満の場合は乗用事業として区分されます。

21条による乗合旅客の運送許可(鉄道代替・実証実験等)

 21条の許可に基づく運送とは、貸切バスや一般タクシーが、災害や緊急時、または一時的な需要に応じて乗合旅客を運送する場合に国土交通大臣から得る許可です。許可の要件は下記のとおりです。

  • 一般乗合旅客自動車運送事業者によることが困難な場合であること
  • 運行する期間が原則1年以下のもの(実証実験の場合は自治体からの要請で3年程度の期間を認める)
  • イベント客の輸送、鉄道運休の代替、実証運行など、短期間に限定され、期間の延長が予定されない運行
  • 自治体等からの要請に基づくもの

 例えば、新しく運行する運送サービス(コミュニティバス、乗合タクシー)が地域住民のニーズに合うかどうかの実証運行をしたい場合、一般乗合の事業許可よりも簡便な形で運行の許可を得ることができます。

特定旅客運送事業(43条許可)

 特定旅客運送事業は、特定の範囲の乗客のみを対象に運送する事業であり、法43条に規定されています。代表例として、企業が従業員を工場へ送迎するバスや、医療施設と自宅の間で要介護者を送迎する輸送などが該当します。

 この事業は、不特定多数を対象としないため、一般の乗合事業とは異なる運用が可能です。ただし、対象となる利用者の範囲や運行ルートが厳密に限定されており、適切な管理と監督が求められます。

自家用車による運送

 今まで紹介した各種制度は、すべて「緑ナンバー」による運行となりますが、ここから先は、2023年以降に制度改正がなされた「自家用車の活用による有償運送」の話となります。

自家用有償旅客運送事業(公共ライドシェア・2号ライドシェア)

 道路運送法78条2項に基づく事業で、公共ライドシェアと呼ばれていますが、この形態自体は新しい概念ではなく、従来より認められてきた運送形態となります。以下の二つに大きく分かれます。

  • 交通空白地有償運送:市町村やNPO法人等が運行。タクシー事業者の協力による運行(事業者協力型自家用有償旅客運送)も可能。
  • 福祉有償運送:要介護者や障害者など、特定の利用者に限定される輸送形態。

自家用車活用事業(日本版ライドシェア・3号ライドシェア)

 道路運送法78条3項にある「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」という条文に基づき、国土交通省が指定する、『タクシーが不足する地域、時期及び時間帯』で導入されるものです。大都市部で、一般のタクシーを補完する形で自家用車・一種免許ドライバーで運行する形態が該当します。わざわざ「日本版」と冠しているのは、法人タクシー事業者が雇用及び運行管理を行うという点で、諸外国に見られるUberやGrabなどのライドシェア事業とは異なる点が挙げられます。

許可及び登録を要しない運送

 最後に、道路運送法では、運賃(対価)をとって旅客を輸送する事業について規定したものですが、自家用車を使って、無償で(何ら対価を得ずに)旅客を輸送する形態については、道路運送法の適用外となります。この無償運送は、「道路運送法における許可又は登録を要しない運送」と呼ばれますが、この無償運送に関するガイドラインが発出されています。これまた難解でありますが、例えば以下の運送については、許可・登録を要さずに実施可能です。

  • 行政やボランティア等による無償運送:地域社会の外出支援としての無償運送。
  • 旅館・商業施設の送迎:宿泊施設やショッピングモールが顧客向けに提供する無料送迎バス。
  • 無料シャトルバス:イベントや観光地での無料送迎サービス。
  • 企業による自社従業員の輸送:工場やオフィスへの通勤輸送。

 なお、この無償運送は(これまた少し解釈が複雑ですが)、一切の対価を受け取ってはならないという訳ではなく、社会通念上常識的な範囲での「謝礼」や、ガソリン代等の実費は受け取っても構わないとされます。このあたり、最終的には、それぞれの事案に則して個別に総合的な判断を行うこととなっていますので、運輸局(支局)へ相談されることをおすすめします。

出典:北海道運輸局:道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドラインについて:令和6年8月7日、https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000330724.pdf

まとめ

 道路運送法は、多様な運送形態や昨今の社会情勢に対応するために何度も制度が見直され、複雑な制度設計がされていますが、基本は「誰が」「どのような目的で」「どんな方法で」運送するのかに応じて適切な条文が適用されます。細部にわたると相当マニアックな制度となりますが、交通政策や地域公共交通の担当者としては、丸暗記する必要はありませんが、関係者が協議を重ねる中でこうした法制度のカラクリを知っていると、協議がスムーズに進むかも知れません。ご参考になれば幸いです。

参考文献