地域公共交通計画のPDCAに実効性を持たせる方法はなんですか?

担当:福本雅之(合同会社萬創社)

地域公共交通計画の評価をしているけど、数字を出して終わりだなぁ

協議会で定期的に評価してPDCAを回せる仕組みを構築しましょう

 一昔前の地域公共交通網形成計画や、地域公共交通総合連携計画においては、計画書のPDCAの項目には、PDCAサイクルの図が載っていてオシマイ、実際のPDCAも機能することはあまりないというのが実態でしたが、近年の地域公共交通計画においては、計画期間中及び年間のスケジュールを示した上で、地方運輸局の開催する第三者評価委員会に評価結果を送付するということが行われるようになってきています。

 しかしながら、第三者評価委員会に送付されている評価結果を見ると(中部運輸局は第三者評価委員会の結果を公表しているので誰でも見ることができる)、単に実績の数字を出しているだけで改善につなげられていなかったり、そもそも計画に掲げた事業を実施しているのかどうかも十分に把握していなかったりという例も少なくありません。

 そこで本稿では、地域公共交通計画のPDCAに実効性を持たせる工夫について述べてみたいと思います。

協議会で事業の進捗を管理する

 国の地域公共交通確保維持改善事業の補助申請を行う6月頃と、同事業の第三者評価委員会に評価結果を送付する1月頃の年に2回、協議会を開催するところが多いでしょう。

 この2回の協議会を活用して、計画に位置づけた事業が確実に進捗するよう、進捗管理をすることが大切です。

 具体的には、

①6月の協議会で当該年度の事業予定について報告する

②1月の協議会で、①の事業予定の進捗状況の中間報告を行う

③翌6月の協議会で、②を元に最終的な事業実施結果の最終報告を行う

という3段階で事業の進捗管理を行えば、抜け漏れが生じることがなくなるでしょう。

 また、①については当該年度の予算の審議と併せて行うと、予算の執行予定がより具体的な内容を伴って理解できるため、有効だと考えられます。

評価指標を毎年確認する

 計画に掲げた目標値は最終年度に達成を目指すものですが、毎年の事業実施の成果が、実績値として現れてくるのですから、事業実施の効果があったかどうかを検証するためにも、毎年の実績値が、計画策定当初の現況値から目標値に近づきつつあるのかどうかを、毎年、確認する必要があります。

 これは6月の協議会で、前年度の事業実施結果とともに報告することが望ましいでしょう。また、これらは予算執行を伴う事業実施の結果であることから、前年度の決算や監査報告の協議と併せて説明するとわかりやすいと言えます。

評価を毎年のルーチンにする

 以上のサイクルを定例開催の協議会のルーチンとすれば、事業の進捗管理も、評価指標の確認も毎年忘れずに行うことができるようになります。逆にこれらができていなければ、毎年の事業結果を踏まえて改善策についても議論することもできません。

 また、評価はあくまでも改善のための方法に過ぎないことも忘れてはいけません。単に「事業を実施した、しなかった」というアウトプットを確認するだけでなく、実施した結果、利用者が増えた、市民の認知度が上がった、といった得られた成果(アウトカム)を確認し、事業とアウトカムの因果関係を考察することで、さらなる改善のヒントを得ることが大切です。

 評価を面倒なもの、達成しない場合の言い訳を考える余計な仕事、と考えるのではなく、進捗管理を確実に行うことで、改善策を考える機会と捉えていただければと思います。

参考資料

中部運輸局:よりよい地域公共交通を目指して、定期的に評価をしましょう ~地域公共交通に関する事業評価の手引き~

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