住民ワークショップのコツはありますか?

担当:辻堂史子(株式会社ティデザイン)

交通まちづくりにおいて、住民と対面で意見交換することは、とても重要であることは知っているけれど。具体的には、どうやって進めたらよいのだろうか?

ファシリテーターとして、ちょっとしたコツさえ掴めば、建設的な意見交換ができますよ!

住民ワークショップの事前準備

 住民ワークショップ(=住民懇談会)を実施する場合には、以下のような点について事前に検討しましょう。

  • 住民ワークショップの目的・着地点を事前に設定しましょう。
    (取りまとめは必要なくアイデアを沢山出し合いたいのか、具体的なルートやダイヤを検討したいのか、など)
  • 住民ワークショップは、自治体と市民の2者ではなく、第3者が参加することにより、一層活発な議論に発展します。ぜひ、沿線企業・交通事業者・学識者・コンサルタントなど、多様な方の参加を目指しましょう。
  • 参加者の参加方法を事前に検討し、関係者で共有しましょう。
    (お出かけ目的地へシールを貼ってもらう、付箋にアイデアを書いてもらう、など)
  • 和やかに議論いただくために、お茶やお菓子などのアイテムを活用しましょう。
    (意見をたくさん出してもらうために喉を潤してください!頭を活性するために糖分を摂取してください!と案内できるため、場を和ませる力があります)

 ★注意★高齢者等が多い場合、参加者に付箋に直接マジックでアイデアや意見を書いてもらうことは、大変ハードルが高いです。3~4回シリーズで開催し、同じ方に参加いただく場であれば、そのようなスキルも身に着けていただくためにも、1回目で付箋に文字を書く練習から始めることが有効です。一方、1回だけのワークショップであれば、ファシリテーターが聞き取りを行って付箋に書く方が、効率的にかつ確実に意見交換を進めることができます。
 開催目的や参加者層・人数を勘案し、参加方法を検討しましょう。

マップの活用

 住民の皆さまと意見交換する際には、対象となる地域のマップ(公共交通の路線図付き)を大判で広げて見ながら議論しましょう。問題点の理解促進や具体的なアイデアに発展します。

 また、目的地となる施設にシールを貼ったり(地域の方の生活圏・行動範囲を把握するため)、意見を書いた付箋を貼ったりすることで、マップを有効活用しましょう。

 マップに貼る付箋メモは、ファシリテーターが記憶するためのものではなく、

1)参加者同士が、どのような意見が出たか、その場で見ることができる

2)他人の意見から、連想ゲームのように、新しい発想で意見をひねりだすことができる

など、議論を活発化するためのツールです。そのため、参加者が読めることが重要です。

 なお、どのような意見も、全てメモしてください。その場での取捨選択は必要ありません。それは、次のステップです。

ファシリテーターのコツ

 付箋の書き方や取組方法について、いくつかコツをご紹介します。

①太いマジックで、大きく、分かりやすく単語を。

  • 付箋のコメントは、2m離れている人も読むことができるよう、太いマジックを使用して大きい字で書いてください。
  • 裏写りがしない、水性のもの(例えばプロッキー等)を使用すると、後の片付けが楽です。
  • パッと見て、内容が分かるように、文章ではなく単語を書いてください。
    (○や×なども活用。)
  • 1つの内容が1つの付箋に書ききれないときは、2つ、3つと付箋をつなげて、大きな文字で書いてください。
  • 漢字が分からなければ、ひらがな・カタカナでOK。

②黒文字に、色を付ける。

  • 文字は読みやすいように、黒文字・青文字が基本です。
  • 時間があれば、ご意見の内容でグルーピングします。異なる色での囲い込みが有効です。
  • そこまで時間が取れない場合は、「付箋に異なる色でラインする」ことが有効です。例えば、「現状は赤ライン」、「要望・アイデアは緑ライン」など。
  • ファシリテーターに時間・心の余裕があれば、付箋の色を変えることも有効です。

例えば、「現状はピンク付箋」、「要望・アイデアは黄色付箋」など。

  • 参加者にも分かり易いですし、ファシリテーターもその場で分かります。

③マップにも書き込む。

  • 狭い道、危険な交差点、高齢者の多いエリアなど、付箋では分からない内容については、マップに直接書き込んでください。
  • 人の動きを矢印(→)で書き込むと、理解がしやすいです。

④最初の一言は質問から。

  • はじめの一言が出ない場合は、「皆さま運転免許はお持ちですか?」「いつもバスは利用されますか?」など、全員回答できる質問をして、手を挙げてもらってください。「手を挙げる」という参加型の行動をしてもらえば、場が和み、一体感が生まれます。

⑤周りに頼る。

  • 常にしゃべり続ける方がいる、地名が分からない、怒り出す人がいるなど困ったら、すぐに誰かに頼ってください。
  • 多様な方が参加されていますので、一人で担わずに一緒に進めましょう。

⑥意見交換内容を共有する。

  • 次のステップにつながるよう、どのような意見があったか、各テーブルでの議論内容を発表してもらい、情報共有を図ってください。(2~3分ずつ)

⑦フィードバックする。

  • 住民ワークショップを開催したら、開催状況や内容等を市民へフィードバックしてください。(ホームページへの掲載、広報への掲載、地区での回覧など)
  • 主催者(多くは自治体)が、まずは住民意見をきちんと受け取り、一緒に議論したことを、きちんと伝えることが大事です。そこから、次の議論が生まれます。

 地域の現状や問題は、地域住民の皆さまが一番ご存じです。コツを掴んで、ぜひ、地域の公共交通について、住民の皆さまと議論を深めてください。

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