担当:井原雄人(早稲田大学スマート社会技術融合研究機構)
超小型モビリティって何ですか?
原付二輪車と軽自動車の間に位置づけされる1~2人乗りの自動車で、コンパクトで小回りがきくことから、これまでの車の使い方を補完するものとして期待されています。
超小型モビリティの定義
超小型モビリティとは、原付二輪車より大きく軽自動車より小さい、1~2人乗りの小型自動車です。道路運送車両法としては、第一種原動機付自転車または軽自動車に分類されますが、軽自動車の規格の中でもよりコンパクトな車両となっており、小回りがきくことから、これまでの車の使い方を補完するものとして期待されています。
これまでの車の使い方とはどういったものでしょうか。ここは地域公共交通のトリセツですので、公共交通の利用をおすすめするわけですが、実際の移動においては自家用車の利用が便利である場合ももちろんあります。そんな自家用車の利用をがどういった状態で行われているかというと、国土交通省が実施している「道路交通センサス」の調査結果によれば、7割程度が1回の走行距離は10㎞以下であり、乗車人数は9割以上の場合で2人乗り以下となっています。また、超小型モビリティが走行できない高速道路の利用も半分の車両では行われていないという状態があります。
もちろん車そのものの魅力というものや毎日同じ使い方しているわけではありませんが、車の使い方として、通常の軽自動車や普通車では過剰な大きさであり、超小型モビリティで十分に事足りるという場合も多く存在します。
超小型モビリティの特徴と適用可能性
超小型モビリティの特徴は、前述した小回りがきくということ以外にも環境性能に優れいている点があります。超小型モビリティの多くは電気自動車であり、軽い車両重量との組み合わせにより走行時の消費エネルギーが少ないというのも特徴です。その消費エネルギーは普通ガソリン車の1/6程度といわれています。
逆に、小型であるということは定員や積載量に劣るということになり、柔軟な使い方ができないということになります。しかし以下に事例を挙げるように、超小型モビリティでも事足りるというような、使い方が限定されている場合には適用可能性は十分にあります。
業務利用
業務用車両としての利用においては、コンビニエンスストアやファストフードの配達などの少量の貨物(飲食物など)を短距離輸送する際に利用されています。特に、新しい生活様式に対応したデリバリー需要の増加とは親和性が高いと考えられます。車幅も小さいので駐車場所を見つけるのも容易です。
また、介護福祉における訪問業務などにも用いられている事例もあります。こちらは貨物を配達するわけではありませんが、1人で限られた範囲を巡回することを求められる業務であり、超小型モビリティの性能要件とも合致します。
導入事例:セブンイレブンジャパン
観光利用
観光地での利用においては、中山間地域や離島など公共交通が不便な地域を周遊する手段として利用されています。こうした地域ではガソリンスタンドが無いこともあり、家庭用のコンセントで充電できることもメリットになります。
公共交通が不便な地域などで移動手段がない場合に観光客は、レンタカーしか選択肢が無かったのに対して、観光地までは公共交通機関を利用し、地域内の周遊に超小型モビリティを組み合わせるという選択肢を用意することができます。また、超小型モビリティ自体を観光資源と捉えて運用するということも効果的です。
導入例:姫島エコツーリズム
シェアリング利用
地方都市での利用においては、通勤時の駅から職場までのカーシェアリングとして利用されています。地方都市においては、最寄駅から職場までの距離がある事が多く、マイカー通勤による交通渋滞などの課題が発生しています。これに対して、駅から職場までの移動手段として提供することで、公共交通機関と乗り継いでの通勤が可能となります。また、昼間の近距離の業務にも活用可能であり、社用車の削減などの効果も期待できます。
導入事例:豊田市Ha:mo RIDE
このように、超小型モビリティの特徴を生かして活用できる場面はたくさんあります。しかし、超小型モビリティ単独で考えるのではなく、観光利用やシェアリング利用のように、既存の公共交通機関と組み合わせ、多様な選択肢の一つとすることでより大きな効果を生むことができます。
超小型モビリティの普及の取り組み
国土交通省では、2010年の各地での実証試験を皮切りに、導入に向けてのガイドライン・ガイドブック(前半/後半)の策定や車両認定制度の創設などを行うことで普及促進を図ってきました。
また、地域交通のグリーン化に向けた次世代自動車普及促進事業と組み合わせることで、導入時の補助をすることにより、これまで8500台ほどの導入実績があります。しかし、その多くは原付に分類される1人乗りのもので、認定制度を経て公道走行が可能とした分類の車両は300台ほどの普及にとどまっています。
こういった状況を踏まえて、さらなる普及促進を行うため2020年9月1日に超小型モビリティに対応した道路運送車両法施行規則の一部が改正され、同日に公布、施行されました。
この法改正により、超小型モビリティとは「全長:2.5m、全幅:1.3m、全高:2mを超えない、最高時速60km以下の軽自動車のうち、高速自動車国道等を運行しないもの」と明確に定義されました。これにより、これまで認定を受けた車両でなければ公道を走行できなかったという規制が緩和され、60㎞/h以下の車両であることを示すマークを表示することで、公道を走行することが可能になり、今後の普及促進に繋がると考えられます。