バスロケを導入する為にはどうすればいいですか?
バスロケメーカーやIT系を得意とするコンサルタントに相談する事で導入検討は進められますが、地域によって必要な機能が異なるので、導入側が適切な知識を身に付けおく事も重要です
バスロケとは?
いわゆるバスロケーションシステム(またはバスロケーションサービス)の事を言います。バスの位置情報を無線通信やGPSなどを利用して収集し、バスの現在位置や遅れ状況を可視化するシステムです。事業者内での運行管理への活用と、利用者向けの情報提供を行う2つの側面があります。
運行管理への活用では、バスの遅延状況や早発確認などの他、運行実績はダイヤ改正時の参考データとして活用されます。一方、利用者向けの情報提供では、専用Webサイトやアプリでの表示、現地のバス停などでのサイネージ機器での表示、Googleマップでの案内など様々な種類があります。今回のトリセツでは位置情報を活用したタイプの「利用者への情報提供」を中心としたシステム面について取り上げます。
高価なシステムを導入すれば良い情報提供が出来るか?
バスロケの導入は、お金を多くかければ良いシステムが導入でき、良い情報提供ができ、利用者が満足するとは限りません。導入側が知識を高めてメーカーと対等な立場で話をする事や、メーカーとの間を取り持つコンサルタントなどと手を組み、地域において異なる利用者の課題を適切に把握し最適な情報提供を行う事も大切です。また、最近では標準的なデータ形式でバスロケの情報を出力する機能のニーズが高まっています。
各社の製品については、公共交通利用促進ネットワークのコチラのページも参考にしてみてください。
中津川市の事例
簡易的な仕組みを用いて、コミュニティバスに使われているハイエースの位置情報が、Googleマップや病院に置かれたモニターで情報提供される事例となります。
コミュニティバスで使われる車両
Googleマップとサイネージ画面で、
同じ情報が異なった見え方をしている例
「バスロケ」に含まれる機能について
「バスロケーションシステム」を導入する際、1つのメーカーに一括で委託する場合には意識をしないかもしれませんが、システムの機能は以下の3つに大きく分けられます。
特に利用者向けのサービス提供については、一括で同じメーカーに委託しないと出来ないと思われがちですが、システムから出力されるデータが汎用的な形式であれば、バスロケシステム委託先とは切り離し、別メーカーに委託を行う事も可能であり選択肢が広がります。一つのデータが様々なサービスに利用できる事から、この考え方は「ワンソースマルチユース」と呼ばれ、近年事例が増えて起きております。
「ワンソースマルチユース」を行う為には、バスロケシステムから出力される動的データのライセンスが、縛りが無い形での提供が望ましい点も付け加えておきます。
中津川市の事例
中津川市で2018年度に行った実証実験では、バス車両に取り付けてあったドライブレコーダーから緯度経度を取得し、バスロケのシステムを通じて、様々な形式での情報提供を行いました。
「バスロケ」のサービスレベルについて
「バスロケ」は情報提供の内容によってレベル分けすることが可能です。また、このレベル分けを意識しないで、単純に費用だけ比較してシステムをメーカーに発注すると、後からでは変更が効かず、変更には仕様変更の追加費用または、メーカーの切り替えが必要となり、後から取り返しのつかない事態となります。
なお。Googleへの情報提供に必要なGTFSリアルタイムの生成には情報提供レベル3以上が必要となります。費用の他、利用者の特性、バス路線の規模・特徴・運行期間に応じて、適切なサービスレベルを選択することが重要となります。
バスロケの情報提供サービス定義例
情報 提供 レベル | 利用者への 案内 | システム的 な特徴 | 特徴 |
---|---|---|---|
0 | 計画ダイヤ のみ | バスロケ システム 未導入 | 【システム導入に向いている運行形態】 ・道路混雑もなく、遅延が起きない ・遅延が起きても、2~3分で収まり 利用者が困っていない場合 |
1 | 位置情報の 案内のみ | 位置情報の 取得のみ | 【メリット】 ・導入が簡単で費用も安い 【デメリット】 ・営業・回送・休憩などの判別が難しい ・MAP上の車両が何系統かわからない ・GTFSリアルタイム対応不可 【システム導入に向いている運行形態】 ・規模の小さなバス路線 ・1つの路線しかないコミュニティバス ・幼稚園や自動車教習所の送迎バスなど |
2 | 系統や方面ごとに 車両位置情報を 案内 | 位置情報と 系統/方面 情報が連動 | 【メリット】 ・ダイヤとの紐付けが不要 【デメリット】 ・遅れ情報の表示が出来ない ・GTFSリアルタイム対応不可 【システム導入に向いている運行形態】 ・1つの車両が1つの路線を 1日中運行している循環路線 |
3 | 便単位で 遅延情報を案内 | 位置情報と ダイヤ情報 が連動 | 【メリット】 ・遅れ時間の案内が可能 ・GTFSリアルタイム対応可能 【デメリット】 ・始発停留所での遅れが案内出来ない ・ダイヤ改正の度にシステム側の データ更新が必要 |
4 | 始発停留所での 遅延情報案内が 可能 | 位置情報と 仕業情報(※) が連動 | 【メリット】 ・始発バス停での遅れ情報も案内可能 ・GTFSリアルタイム対応可能 【デメリット】 ・車内で他の機器との連動が 必要になると導入費用が高額となる ・バス車両機器と連動しないと、 トラブル発生による車両変更時 など、営業所にて管理が必要となる |
※仕業情報:1日におけるバス車両の運用、または運転手が担当する工程を表した情報
「平成30年7月西日本豪雨災害」呉線代行バス 簡易バスロケ
上記の災害によりバスが運行する道路で連日大渋滞が発生し、定刻通りにバスが運行できない状況である事から、「情報提供レベル3」でのサービス提供を行い遅延時分の案内を試みましたが、運行ダイヤが頻繁に変わる事と、遅延がひどく始発時刻も安定しない状況から断念せざるを得ない状況でした。
システム的には「情報提供レベル1」での選択肢しか残っていない状況でしたが、呉行きの車両か、坂行きの車両かの判別が付かないと利用者が乗車するバスの区別がつかない状況であり、現地からは「情報提供レベル2」以上が求められました。
結果的には、サービスの稼働期間が短かった事もあり、現地でのスタッフによるGPS機器の振り分けをオペレーションとして追加し、「情報提供レベル2」でのサービス提供を実現しました。
神戸市の事例
地域を運行するバス事業者がそれぞれ個別のシステムを導入した結果、利用者は乗りたいバスによって情報の調べ方が異なり、とても使いにくい状態となっています。
こういった状態を避ける為には、統一的なシステムを導入するか、システムは異なっても出力されるバスロケのデータを標準フォーマットでオープンデータとして公開し、利用者への情報提供の仕組みは第三者が作成するか、情報提供はGoogleマップなどの既存サービスを活用する方法があります。
詳細につきましては、「バスロケ情報提供編」として今後別の記事にて紹介をしたいと思います。
参考資料
20190302_公共交通オープンデータ最前線 2019 from Kenji Morohoshi
20190719 JCOMM賞受賞者セッション_西日本豪雨災害時の公共交通情報提供プロジェクト
Civic Tech Forum 2019「ここまできた!標準的バス情報フォーマット(GTFS-JP)~ 国を巻き込み全国にオープンデータが広がったプロセスと今後の展開~」 from Kohei Ota