どうして市町村が地域公共交通に取り組まなければならないのでしょうか?

担当:土井 勉(一般社団法人グローカル交流推進機構)


行政
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どうして市町村が地域公共交通に取り組まなければならないのでしょうか?

地域の実情を最も知っているのが、地元の市町村だから

市町村が地域の実情を最も知っているからです

地域公共交通の仕組みは地域の現状によって異なったものになります。

地域公共交通の計画を考える場合に、基本的な情報である人口の分布、年齢構成、地形、教育や医療・商業施設の立地状況という定量的・物的なものだけでなく、近隣の地域との結びつき、地域コミュニティの状況、人々の気風など地域社会のことを知っておくことが必要です。

さらに、移動の仕組みを支えている鉄道・バス・タクシーやスクールバス、病院送迎車などの状況についても把握しておくことが必要です。

市町村の人たちこそ、こうした情報を深く知ることができる立場です。ただ、交通政策担当者が地域の現状全てを知ろうとすることは現実的ではない場合もあると思います。その際には、市町村の中の様々な部局にこうした情報があると思いますから、積極的に他の部局と交流し相談をすることで得るものも多いと思います。また、既存の交通事業者とは、是非、頻繁に意見交換をしてください。地域公共交通施策を行う際、交通事業者との信頼関係が大きく意味を持ちます。

地域の実情を深く見ていくことは市町村でないと難しいことがあります。

この「トリセツ」に掲載している「100人の村で地域公共交通を考える」でも書きましたが、一見すると移動に問題がないように思える人たちでも、一人ひとりの状況をみると様々な移動の課題がある場合があります。

現場に近い市町村だからこそ、こうした一人ひとりの状況を踏まえた地域公共交通の政策が可能になります。

そして、法制度上でも市町村の役割が明示されています

交通政策基本法では、第9条に地方公共団体の責務として「交通に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と書かれています。

また、地域公共交通活性化再生法(2020年、改正)でも第4条の(3)で「市町村は主体的に地域公共交通の活性化・再生に取り組むように努めなければならない」とされています。市町村こそが、中心になって地域公共交通の政策に取り組むことが示されています。

なお、同条の(2)では「都道府県は、各市区町村を越えた広域的見地から市町村と密接な連携を図り、活性化・再生に取り組む」、同条(1)で「国は、活性化・再生を推進するために必要となる情報の収集、整理、分析及び提供、助言その他の援助、研究開発の推進、人材の養成」などを行うとされています。

人手不足への対応策…味方を創ろう、駆け込み寺を知っておこう

市町村は地域公共交通に関する予算も少なく、担当者も専任者がいる状況も多くないので、そんなに期待されてもできることは限られていると思われるかも知れません。

たしかに、地域の人々の移動=おでかけを公共交通で支える仕事は、専門的な知識が求められるところもあります。

そのために、まずは信頼でき、相談できる人たち(=味方)の存在が重要です。

身近なところで地域公共交通に関わっている人達として、地域公共交通会議や協議会のメンバーがいます。ここには県や国土交通省の人たち、交通事業者の人たちもいるわけですから、彼らに様々な相談をすることで、持っている知恵や知識を教えてもらうことも必要かと思います。また、住民や利用者の方々も参加しているので、移動だけでなく様々な地域の実情を語ってもらえるチャンスでもあります。

地域公共交通会議や協議会を、議案をスムーズに通すだけの場(いわゆる、シャンシャン会議)とするのは、勿体ないことです。行政だけでなく、事業者や地域の代表者や利用者の代表など様々な方々の意見を本音で語り合う場にすることで味方が増える可能性があります。

あるいは地域公共交通会議・協議会で研修などをするのも良いかと思います。気軽にわからないことを相談できる味方を増やしましょう。

また、困ったときの「駆け込み寺」も近年は増えてきました。

例えば、外部でも様々な人材育成の仕組みが準備されています。国交省や県などが開催する研修会もあるし、全国市町村国際文化研修所(JIAM)や市町村アカデミー(JAMP)などの研修会もあります。

この他、公共交通マーケティング研究会NPO法人再生塾Qサポネットなど専門家と実務者で自主的に運営されている仕組みもあります。

こうした場では、講義だけでなく、問題解決力の育成や人的なネットワークの構築にも工夫がされています。そして、困ったときに相談ができる仲間を得ることもできます。

さらに、手軽にわからないことを調べる資料として、このwebで公開されている「公共交通トリセツ」があります。

他にも国交省等がHPで提供されている様々なノウハウ系の資料もあります。ぜひ、こうした資料も活用して下さい。

コンサルタントや学識経験者も重要な相談相手になります。

こうした専門家は、皆さんのかかえている問題に対して知見が深い人もいるでしょうし、他の問題に対応することが得意な人もいます。相談相手の専門性をきちんと把握して、相談をすることが望ましいです。

意外に?感謝してもらえることもある

地域の移動に困っていた人たちを支える仕事ですから、きちんとした仕組みができると喜ぶ人たちが増えてきます。「100人の村で地域公共交通を考える」でアイスクリームが食べられるようになったお婆さんたちのことです。

この仕事を通じて、こうした人達から感謝の言葉をいただくようなことも稀にはあります。その時にはびっくりします。褒めてもらうために仕事をしているわけではありませんが、喜んでもらえると、こちらも本当に嬉しくなります。

こうしたことが現場に近いところで仕事をする醍醐味です。