地域公共交通計画の手引きの手引き

担当:井原雄人(早稲田大学スマート社会技術融合研究機構)

行政
自治体

地域交通法が改正されました。地域公共交通計画の中では具体的にどのように扱っていったらよいですか?

天の声
天の声

法改正に合わせて計画の手引きも更新されています。新たな特定事業や連携促進団体についても追加されていますので参照しましょう。

地域交通法改正(2026年10月18日)

 「地域公共交通活性化再生法が改正されたけど、結局何が変わったの?<2026年版>」でも取り上げました改正地域交通法が、2026年10月18日に施行されました。以前の記事は施行前の情報を基に整理したものですが、法施行に合わせて手引きやガイドラインについても更新されました。手引きの中では、今回の法改正の目玉となっている自動車地域旅客運送サービス再構築事業や連携促進団体の取扱いについても追記されていますので、具体的な内容について見ていきましょう。

自動車地域旅客運送サービス再構築事業

 新たな特定事業として「自動車地域旅客運送サービス再構築事業」が創設されました。特定事業は、地域交通法第2条6項に規定されており、地域公共交通利便増進事業や鉄道事業再構築事業もこれにあたります。

 自動車地域旅客運送サービス再構築事業の運用については、地域公共交通計画等の作成と運用の手引きの「別冊」に詳述されています。その中で具体的に自治体の行う「あっせん」について例示されています。

  • 人員の派遣
    • 交通事業者に対して、運送主体のドライバー業務への協力を依頼
    • 地域住民に対して、ボランティアドライバーとしての活動への協力を依頼
  • 輸送施設の貸与
    • 交通事業者に対して、閑散期における事業用自動車や車庫・停留所、休憩施設等の貸与(共同利用)の協力を依頼
    • 教育委員会や宿泊施設等に対して、空き時間におけるスクールバスや宿泊施設等の送迎車両の貸与の協力を依頼
    • 地域住民に対して、自家用車の持ち込みの協力を依頼
  • 運送に関する役務の一部の提供
    • 民間事業者等に対して、運送主体の以下の業務について協力を依頼
      • 運転業務・運行管理業務(点呼業務を含む)
      • 整備管理業務
      • 運転者等の人員の募集・採用・育成業務
      • 予約受付・配車業務
      • 利用者への運行情報等の周知業務
      • システム等の活用による運送サービスへの協力
    • 自治会やNPO法人等に対して、以下の業務の協力を依頼(無償を含む)
      • 停留所における利用者への案内・乗降補助・安全確保
      • 運送サービスの周知・利用促進

 特定事業として位置づけることで「あっせん」に対して、施設利用者用運送サービス提供者その他の地域の関係者は、円滑な実施に協力するよう努めなければならないとされています。しかし、特定事業として位置づけられることが前提となり、とにかく協力せよという義務が生じるわけではないところには注意が必要です。

連携促進団体

 協議会の構成員として「連携促進団体」が位置づけられました。連携促進団体は地域交通法第6条2項に規定されており、協議会の構成員となるとともに、地域公共交通計画の作成・変更に対して提案権を持っていることが特徴です。提案権とは地域交通法第7条に規定されており、これまで交通事業者や利用者が対象であったものに、新たに連携促進団体が追加されたものです。

 連携促進団体については、地域公共交通計画等の作成と運用の手引きの「実践編」に詳述されています。その中では「地域旅客運送サービスに係る地域の関係者相互間の連絡調整及び連携の促進を行う民間団体」とされています。「連絡調整」と「連携の促進」の例示や、対象となる「民間団体」の定義を確認しましょう。

  • 連絡調整
    • 合意形成に向けた関係者への情報提供・共有や地域住民・交通事業者・施設等からの意見聴取
    • 住民説明会や意見交換会の企画、関係者会議の日程調整、それらに向けた資料作成・課題整理などの連携の場の運営
  • 連携の促進
    • 地域の関係者の連携・協働によって移動手段を確保(輸送資源のフル活用)に必要となる施策の企画・立案、関係者間の利害調整、地域旅客運送サービスの導入・運営に係る支援
    • NPO法人等が医療・福祉施設や地元住民との利害調整を担い、その他の利害調整を自治体が行うというような役割分担も「連携の促進」に該当
  • 民間団体
    • 一般社団法人やNPO法人、観光協会、商工会等のほか、株式会社等の営利企業を含め、幅広く対象
    • 法人格を有しない団体については、継続的な活動が可能かの確認が必要
    • 広域的に運送サービスを提供している交通事業者が、自社の運行エリアに限らずに幅広く地域交通の取組を支援している場合にも連携促進団体の制度を活用可能

 このように連携促進団体は、協議会への参画や地域公共交通計画の提案権を持ち、計画策定・事業実施のための連携促進を担うとされると、全てを丸投げしたくなるかもしれません。しかし、連携促進団体の趣旨はあくまでも、企画立案の「支援」や関係者間の「調整」であり、丸投げするのではなく、手を携えるパートナーと位置づけることが重要です。

手引きの手引き

 地域公共交通計画等の作成と運用の手引きは、前身の地域公共交通網形成計画の手引き以降版を重ねて、今回のもので第5版となっています。制度が変わるたびに更新されているのは良いことですが、その代わりに継ぎ足しの秘伝のタレのようになっており、全て読まないと自分たちがやりたいことに適している制度がどれなのか、分かりづらくなっています。

 今回創設された自動車地域旅客運送サービス再構築事業も、既存の地域旅客運送サービス継続事業と比べて何ができて、何ができないかは両方を全部読まないと分かりません。(読んでも分からないかもしれません)しっかり手引きを読んで学べということなのかもしれませんが、自治体のやりたいことという視点から逆引きで制度を調べられるような手引きへ改定していくことが望まれます。

参考文献

国土交通省:「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定
国土交通省:改正地域交通法の施行に向け関係法令・ガイドラインを整備します
国土交通省:地域公共交通計画等の作成と運用の手引き