公共交通の潜在需要の見つけ方

土井勉(一般社団法人グローカル交流推進機構)

Q. 潜在需要ってどうすれば見つけることができるでしょうか?

 

A. 送迎や坂道に注目するのも一つの手ですね

公共交通の需要の捉え方

 これまでは、住宅開発や企業立地・商業開発などの経済圏の変化、、学校や病院などの公共施設の整備、といった要因による商業開発などで人口増加や施設来訪者数が増加することを踏まえてで、公共交通の需要を想定することが多くあったかと思います。

 今後も、居住区域の拡大・縮小や都市機能の再編都市構造の再編などにより、人口の集中や分散の状況が変化することで、公共交通の需要が変化することが考えられます。

 このようにこれまでの、需要予測はこうした都市構造の社会経済状態の変化をとらえることを重視していました。

 公共交通の潜在需要はどこにあるのでしょうか?

 一方、現在は潜在化しているが、何かのきっかけでがあれば、交通需要が顕在化する交通需要ものがあります。いくつかの「地域公共交通計画」でも「潜在需要の把握…」等の記載があります。では潜在需要をしっかり把握するために、何かが行われているかというと、「実はよくわからない」という回答が返ってきたりします。

 ここでは、潜在需要がどこにあるのかについて考えてみたいと思います。

 しばしば、公共交通の潜在的な需要は、「送迎・坂道」にあると言われることがあります。

送迎

 送迎をしてもらって外出を行っている場合には、更に外出を行う希望がある場合でも、送り手に対する遠慮や気兼ねが働き、外出の頻度が少なくなる可能性があります。

 これに対して、一人でも外出ができるように公共交通が整備されると、遠慮や気兼ねなく外出が可能となるので、外出回数が増加します。

 従って、送迎の実態、特にを把握して、送迎される人たちの移動状況を把握し、その対応策に取組むことは、これまで遠慮や気兼ねにより潜在化していた需要をで、潜在需要を顕在化して、公共交通の需要を増やすことにつながります。なります。

 例えば、駅前で送迎の状況を観察することでも、送迎からの転換についていろいろないろんな刺激を得ることができると思います。

 下図はバスが存在することで、実現する活動を調べたものです。


 買い物や通院だけでなく、知人との交流やスポーツ・習い事も顕在化することがわかります。

 また、送迎されていた人たちが一人自身で自由に移動することができると、送迎の担い手も、送迎の負担が減ることになります。送迎する方もされる方も双方がハッピーになる可能性があります。

坂道

 バスのライバルの一つが自転車です。しかし、坂道では自転車の利用は困難な場合があります。一方でバスは坂道も克服することができる移動手段です。

 実際に、神戸市企画調整局でバスの利用実績に関係がある指標である人口や沿線立地施設などとの相関を調べたところ、標高差と利用実績に正の相関があることが明らかになりました

 このことから、坂道に居住する人たちに移動の手段を提供することで、需要を顕在化させることが掘り起こすことが期待できるものと考えられます。

潜在需要の顕在化は

 こうした送迎や坂道において、潜在需要を顕在化する取り組みは、先ずは公共交通の利用者を増やすことになりますが、こうして自由に外出できた人たちがまちで活動を行うことで、まちには賑わいが生まれることが期待できます。すると、まちの店舗などでは売上が増加し、さらに雇用が拡大することにもつながっていくことが考えられます。

 潜在需要の顕在化を促す公共交通は、まさに住みやすいまち、賑わいがあるまちを形成するための重要な都市経営のツールだということができそうです。