担当:トリセツ編集会議
自治体や交通事業者の職員が、公共交通についての業務をすると「運輸局」「運輸支局」とやりとりをすることが多くあると思います。国の機関なので「なんとなく敷居が高い」という人もいるようです。その理由として、「何をしている役所なのかよくわからない」ということもあろうかと思います。
そこで、トリセツ編集会議では北陸信越運輸局の交通企画課長である新倉孝礼さんに運輸局の仕事や、補助制度などについてインタビューをしました。
皆さんの運輸局に対する理解が深まれば幸いです。
運輸局ってどんな役所?
<トリセツ編集会議(以下、「編」)>:本日はよろしくおねがいします。さっそくですが、運輸局って簡単に言うとどんな役所ですか?
<新倉課長(以下、「新」)>:●●運輸局、私の場合で言えば「北陸信越運輸局」ですが、この地方運輸局というのは、国土交通省の地方出先機関で、交通・観光について所管している役所です。と言っても、一般の方にはなかなか馴染みのない組織かもしれません。皆さんに身近なところで言えば、かつてはナンバープレート・車検を所管する「陸運局」と呼ばれていた役所が組織変更を経て運輸局になりましたので、そのイメージが強いかもしれません。
<編>:新倉さんは北陸信越運輸局ということですが、全国にいくつかあるんでしょうか?
<新>:地方運輸局は全国を10ブロックに分けて所管しています。本局の下には、支局や事務所が置かれています。主な業務内容としては、地域公共交通の確保維持、観光振興、鉄道・バス・トラックなどの許認可・監査、自動車の検査・登録などです。自動車の登録で運輸支局に行ったことがあるという方は多いのではないでしょうか。
<編>:自動車の登録というのはナンバープレートを発行してもらうあれですね。ナンバープレートと言えば、先ほど「陸運局」という言葉が出ました。
<新>:運輸局という組織になるまでには体制の変遷があります。古くは運輸省陸運局・海運局であったものが、地方運輸局へと改組され、国土交通省が発足した後に管轄区域の変更も経て現在の形になっています。各運輸局の中には、総務部、交通政策部、鉄道部、自動車交通部、自動車技術安全部、海事振興部、海上安全環境部、観光部などが設置されており、地域公共交通分野との関わりが深いのは、交通政策部・自動車交通部ですが、鉄道や海運が関係する場合などをはじめとして、各部が連携して対応しています。
<編>:国の機関ということなので、職員の皆さんは国家公務員ということになるんでしょうか?
<新>:そうです。ただ、採用は地方運輸局独自で実施していますので、多くの職員は現地で採用された地元出身者です。その他に、本省や自治体などからの出向者もいます。
地域公共交通に関わる部署の職員は、支局でバス・タクシーの許認可業務の経験を積み、本局で交通政策に従事するなど専門知識を高めています。ただ、行政組織の常として人事異動が数年おきにあるので、担当になったら必死になって知識を得るように努力しています。
地域公共交通に関わる部署
<編>:トリセツの読者の多くは地域公共交通に興味があると思います。地域公共交通に関係する部署とその仕事について教えてください。
<新>:地域公共交通、特に自治体の皆さんと関わるところとしては「交通政策部」「自動車交通部」「運輸支局」の3つの部署かと思います。
交通政策部の業務としては、
- 交通企画課:地域公共交通政策全体の取りまとめ。地域公共交通計画の作成・運用に関する助言や、各種補助金の執行、各種セミナーの開催など
- 環境・物流課:環境にやさしい交通・物流の推進、持続可能な物流の実現など
- 共生社会推進課:公共交通のバリアフリー化の推進など
自動車交通部の業務としては、
- 旅客第一課:バス(乗合・貸切)の許認可、バス関係の補助金
- 旅客第二課:タクシーの許認可、自家用有償旅客運送(公共ライドシェア)の登録、タクシー・自家用有償旅客運送関係の補助金
※運輸局によっては、「旅客課」1課のみの地域も(北陸信越、四国)
運輸支局の業務としては、
- 企画調整部門:担当都道府県で交通政策部の業務を担う
- 輸送監査部門:担当都道府県で自動車交通部の業務を担う
※運輸支局によっては、「総務企画」や「輸送企画」といった組織体制の地域も
このほか、鉄道関係や海運関係の部署もあります。
鉄道部の業務としては、
- 監理課:鉄道事業の許認可・監査
- 計画課:新線計画、鉄道関係の補助金
海事振興部の業務としては、
- 旅客課:旅客船(フェリーなど)の許認可、旅客船関係の補助金
などがあります。
簡単にいえば、交通政策部や支局企画調整部門は対自治体、自動車交通部や支局輸送監査部門は対事業者を担当していると言えます。ただ、支局企画調整部門は担当者が一人であるケースも少なくなく、本局・支局で連携しながら対応に当たっています。
運輸支局は、地域公共交通会議や法定協議会に出席し、助言するなど各地域で地域公共交通政策の最前線に立っています。それ以外にも、日々、各地域から相談を受けて、制度の解説や補助金の紹介、他地域の事例などの紹介を通じて、地域公共交通に関わる皆さんをサポートしています。
<編>:運輸局は国の機関と言いつつも、地元で採用された人たちが中心となって、地域に出向いて業務をされているのですね。
<新>:どんな人がどんな組織で働いているのかわからず、距離感をつかみかねているケースもあるかもしれませんが、ブロックごとに支局があり、公共交通担当者がいます。いつでも門戸を開いていますので、悩むことがあれば、気軽に相談してください!
わざわざアポイントメントを取るのに抵抗があるようであれば、運輸局や支局で開催している「セミナー」などの際にでもお声がけをいただければ,様々な情報交換ができると思います。
<編>:本日はありがとうございました。次回は「国の補助制度ってどう使ったらいいの?」について伺おうと思います。