担当:一般社団法人グローカル交流推進機構 土井 勉
公的資料から乗合バスに関するデータを見てみよう
先ず,国土交通省のホームページ「一般乗合旅客自動車運送事業について」には,地域公共交通会議の紹介や,バスに関する通達,各種の申請などがまとめられています.全国の乗合バスの経営状況がわかるので,是非,皆さんもこのページをご覧になって下さい.
同じページで運賃・料金関係についても紹介されています.平成13(2001)年度から最新の令和6(2024)年度までの乗合バス事業(保有車両30両以上の事業者を対象)の収支状況がここに掲載されています.
乗合バスの収支の状況
この資料をもとに2024年度の乗合バスの収支状況を考えてみましょう.
先ず「年度別経常収支率の推移」という年度別の収支率を示す折れ線グラフがでてきます.

図-1 年度別経常収支率の推移(民営・公営)
これを見ると2020(令和2)年度にコロナ禍による大きな落ち込みがあったものの,民営事業者はかなり頑張ってコロナ前の状況に近づいていることがわかります.
そして,公営だけでなく,民営バスもこのグラフのスタートにあたる2010(平成22)年度から1度も収支率が100%=収支均衡ができていないということがわかります.乗合バスを黒字化するべきだ,という意見も少なくありませんが,この状況をみると,なかなか厳しいことがわかります.
このように収支均衡ができていない状況で運行を継続するためには,①経費節減(サービス低下をもたらす),②内部補助(収益が上がっている部門からのサポート.本来は収益を支えてくれているお客さんに還元すべき),③行政からの補助金の投入,そして④運賃改訂により利用者からの支援を得るという,4つの方策が実施されてきました.
乗合バスの収入と支出の推移
令和6(2024)年度までの乗合バス事業(保有車両30両以上の事業者を対象)の収支状況の推移をみたものが表-1です.
表-1 令和6年度の一般乗合バス事業(保有車両30両以上)の収支状況について

この表で収入は令和2年度の5,400億円から令和6年度の7,000億円と増加傾向となっています一方、支出はおよそ7,200億円から7.600億円となっています.そして損益が△2,000億円から△600億円となっています.なお、表-1では令和2年度はコロナ禍での外出控えによる利用者減少が見られた年であり、その後収入額の回復により、損益額(赤字額)が次第に小さくなってきたことが分かりますが、令和6年度でも収入より支出が上回っており、この損益は補助金などで埋められていることになるのです.
乗合バスの7,600億円って何?
上記より,2024(令和6)年度をベースとして,全国の乗合バスの収入は約7,000億円,支出が7,600億円,損益が600億円というように,おおよその額を覚えていくとよいと思います.
そうすると,例えば7,600億円あれば,全国の乗合バスを全て運行することができることになりそうです.7,600億円はとても大きな金額なのですが,例えば2025年12月に廃止されたガソリンの暫定税率(25.1円/L)の廃止による税の収減が約1.5兆円と想定されています.それと比べると約半額になります。全国の乗合バスの総支出額は意外に小さな金額であることがわかります.暫定税率の1/2程度(約7,500億円)の予算があればで全国のバスの経費を賄うことができそうです.
あるいは、乗合バスの損益の600億円を国民1人あたりでみると、日本の人口がおよそ1億2,000万人ですから、国民1人あたりおよそ500円となります。とすると、全国民が年に1回バスで往復するだけでこの損益をまかなうことができそうです。
このように乗合バスの総収入額7,000億円、総支出額7,600億円、損益は600億円という数字を把握すると様々な想像力が動き出すことがわかります。
そしてこうしたデータを様々な活動と突き合わせることで、例えば,ここで示したような自動車利用を促す暫定税率廃止と公共交通を安定的に運行するための政策,どちらが良いのか考えてみる材料にもなります.
トリセツでは,こうした公共交通に関するデータの勘所についても,今後は紹介させていただきたいと思います.

