担当:福本雅之(合同会社萬創社)
OD表ってよく聞くけどなんだろう?
バスや鉄道の利用者がどこからどこまで利用したのかを集計した表のことです
業務でバスや鉄道に関わるようになると、「ODデータ」とか「OD表」と言った言葉を耳にすることがあると思います。「なんとなく利用者数に関係することだということはわかるのだけど、具体的に説明しろと言われると答えに窮する」という方もいらっしゃるかもしれません。今回は、このOD表について説明したいと思います。
ODとは
OD表の説明に入る前に、ODについて説明をしておきます。ODのOはOriginであり、日本語にすると「起点」です。DはDestinationで、日本語では「終点」です。つまり、ODとは起点と終点の組み合わせという意味です。
バスや鉄道の利用者ODと言う場合、利用者毎の乗車地(O)と降車地(D)がわかるデータのことを指します。
下図に示すように、A→Fというバスがあった場合、利用者によって乗車地と降車地の組み合わせ=ODは異なります。
利用者毎のODを表にまとめると下表のようになります。このような表は、ICカードのログデータや、OD調査をした際のデータ入力によって作成することが可能です。一般にこうした表を「一件明細」と言います。利用一件毎に、その明細(ODや支払運賃など)がわかるようにまとめるため、このように呼びます。
一件明細は、個々の利用者の乗降地点や利用の詳細を見るには良いのですが、全体での利用状況を把握するには向きません。といって、単に路線毎や便毎の利用者数、バス停毎の乗降者数を表にするだけではその路線の利用実態を把握することができませんから、利用者毎のODの違いを把握できるように利用者数をまとめる表を作成することがあります。この表をOD表と言います。
先ほどの一件明細をOD表に書き直した例を下図に示します(一件明細はODの部分のみを抜粋)。対応関係がわかりやすいように、色をつけてあります。
OD表は縦軸(表側)に乗車地点を、横軸(表頭)に降車地点を並べ、それぞれが交差するマスに対応するODの件数を記入していきます。
この例では、A→Dが1件、A→Bが1件、A→Cが1件、B→Cが2件、C→Dが1件ですので、それぞれのマスに数字を記入しているわけです。こうすることで、それぞれの停留所同士の間でどれだけの利用がなされたかがわかるようになります。なお、このOD同士の組み合わせのことをODペアと言います。
OD表の見方
OD表は路線毎に1つ作成することが一般的です。OD表の例を下表に示します。この場合、表の右上側が下り便、左下側に上り便の数値が入るようになります(上り便と下り便で別々のOD表を作成する場合もあります)。
各停留所の乗車人数は停留所毎の横計、降車人数は停留所毎の縦計で、路線の総合計を一番右下のマスに記入します。
先ほども述べたように、それぞれのマスに記入されている数字は停留所同士(ODペア間)での利用者数を表しています。通常、出かけた人は帰るので、上下のODペアの数字は同じような値になるはずです。
ところがまれに、上下のODペアで数値が全く異なる場合があります。こうした場合、「行きはよいよい、帰りは・・・」ということで、行きには使える便があるが、帰りには都合の良い便がない、といった問題が生じている可能性が考えられます。もし、OD表を見て上下でODペアの値が対応していないような場合は、ダイヤ設定などに問題がないかを確認してみると良いでしょう。
おわりに
便別利用者数の表やバス停別利用者数の表だけではわからない、路線の利用状況をOD表では表現できます。ここで例示したようなダイヤの問題を把握するほかにも、運賃表と組み合わせて運賃変更をした場合の収支シミュレーションに用いることや、地区間の利用状況を把握して路線の再編を検討する場合にもOD表は有効です。バスのサービス見直しを行うような場合には、OD表を一度見てみてはどうでしょうか?