【コラム】スコットランド、すっとこどっこい訪問記(1)

担当:福本雅之(合同会社萬創社)

 この8月に、スコットランドのアバディーンに行く機会がありましたので、そのときに見聞きしたことについてお伝えしようと思います。

スコットランド・アバディーン

 スコットランドというとあまりなじみのない方もいらっしゃると思いますが、英国の北側を占める地域です。

 私は縁あって、2008年に初めてスコットランドの地を踏んだ後、2012年に3ヶ月の海外派遣でアバディーン大学に滞在したことがあります。今回、12年ぶりにアバディーンを再訪しました。

 アバディーンはスコットランドで3番目に人口の多い都市(1番目はグラスゴー、2番目はエディンバラ)で、北海に面した港町です。北海油田の前線基地や、北海の離島への玄関口となっている他、ウイスキーで有名なスペイサイド、英国王室の夏の避暑地であるバルモラル城などへの拠点という街です。

アバディーンの交通

 アバディーンは上記のような各地への拠点である性質上、交通の要衝でもあります。郊外のダイス(Dyce)には国際空港があり、アバディーン港は北海航路フェリーの発着点です。鉄道はスコットレイル(Scotrail)がスコットランドの各地を結んでいるほか、ロンドンから直通する特急列車・夜行列車もあります。

 市内および郊外への交通はもっぱら路線バスが担っており、主にFirst社とStagecoach社の2社が路線バスを運行しています。

 このうち、First社は主に市内中心部の路線を、Stagecoach社は市内と郊外を結ぶ路線を多く担っていますが、一部の地区では両者が競合関係にあります。

 なお、Frist社もStagecoach社も英国全土のみならず、海外でも交通事業を手がける巨大企業ですが、First社の総本社はアバディーンに、Stagecoach社の総本社はパースというスコットランドの街にあります。

EVバス・FCVバスの台頭

 さて、12年ぶりにアバディーンを訪問しましたら、市内を走っているバスにEVバスとFCVバスの多いことに驚きました。

 滞在中に行ったエディンバラではディーゼルバスが幅をきかせていましたので、スコットランド中でEVバス、FCVバスが普及しているというわけではないみたいですが、アバディーンでは市内を走らせている2つのバス会社のうち、First社は少なくとも25両のダブルデッカーFCVバスと24両のシングルデッカーEVバスを、Stagecoach社は22両のダブルデッカーEVバスを走らせているようです。

 ダブルデッカーの架装は英国のメーカーが行っているため、EVバスはぱっと見だとどこのメーカー製なのかわかりませんが、運転席を覗くと「BYD」の文字がありました。シングルデッカーは車体も含めて中国のYUTONG(宇通客車、とガラスにあった)製のようです。

バスターミナルで充電・待機中のEVダブルデッカー
シングルデッカーのEVバス

 FCVも車体の架装は英国メーカーですが、燃料電池はカナダのバラード社+走り装置はドイツのシーメンス社という組み合わせということです。

FCVダブルデッカー

 体感的には、中心街で走っているバスのうち、3割以上はEVかFCVという感じです(Frist社、Stagecoach社のサイトによると、一部の路線はすべてEVかFCVでの運行となっている)。

 こうした次世代バスの普及が進んでいる理由として、アバディーン市では、次世代エネルギーの普及に力を入れているとのことで、その一環としてこれらのFCVやEV車両の導入が進んでいるとのことです。これらの車両に供給される水素や電力は再生可能エネルギーにより発電されたものとのことです。

 EVもFCVも充電装置などのインフラの整備を伴うものですから、1台や2台をちまちま導入するのではなく、どうせやるならこのくらいの規模感をもって導入しないと意味がないのではないかと思います。なお、EVバスもFCVバスも乗車しましたが、乗り心地は大変良かったです。

 アバディーンは北海油田の開発によって潤ってきた土地ではありますが、そうであるが故に、エネルギー政策の転換にいち早く対応しようとした取り組みを進めているのだと思います。

参考資料