Google マップにバスの情報を掲載したいのですが。。。
GTFSデータを作っただけでは掲載されません。解説しますね。
GTFSデータを作っただけではGoogle マップに情報は掲載されません!
過去の記事で「GTFSデータの作り方」や「データの活用方法」などについて触れてきましたが、Google マップや、NAVITIME、乗換案内、Yahoo!路線情報、駅すぱあと、駅探等のサービスを運営する国内コンテンツプロバイダへのデータ提供の方法については記事では触れておりませんでした。日頃からこの内容については問い合わせも多く頂くので、この機会に公共交通トリセツの記事にしておきたいと思います。
GTFSデータを作成し、自社HPやGTFSデータリポジトリ等でデータをオープンデータとして公開しても、それだけでは幾ら待っていてもGoogle マップ等にデータは掲載されません。データを掲載するためには手順があり、その手順はGoogle マップと国内コンテンツプロバイダで方法が異なります。順に解説していきます。 なお、今回の記事で説明する内容の多くは、標準的なバス情報フォーマット広め隊が公開している「標準的なバス情報フォーマット コンテンツプロバイダへのデータ提供 初回登録編 (2024/2/29改訂)」(以下、手順書という)に詳細が掲載されています。また、Googleの公式ホームページ「Google 乗換案内にデータを登録する」でも登録方法に関する記載があります。詳細な手順やルールを確認したい方は、こちらも併せてご一読ください。
Google マップのデータ掲載基準
Google マップにデータを掲載できるのは、Googleが定めた基準を満たしていることが条件となります。順に解説をしていきます。
- 一般公開されたサービスを提供していること
- 運営事業者HP等で情報提供が行われ、一般の人が利用できる乗り物が対象となります。貸切バスやスクールバスなど乗車に条件が必要な乗り物の場合にはGoogle マップ掲載対象にならないので注意が必要です。
- 一定の経路とスケジュールで運行していること
- いわゆる定時定路線で運行している乗り物が対象となります。曜日ごとに運行パターンが変わる路線などは、用意するGTFSデータにて曜日運行の設定を行えば問題ありません。
- デマンドバス等、運行経路や時刻が定められていない乗り物は、現時点ではGoogle マップの掲載対象にはなりません。(※1)
- 乗客が車内、駅、または乗車地点で乗車券を購入できること
- Google マップで検索して現地を訪れた一般の方が、その場で乗車券を購入し乗車が可能な乗り物が対象となります。
- 完全予約制の乗り物は対象になりませんが、長距離運行する高速バス等は、ケースごとに承認の可否がGoogleによって判断されます。
- 少なくとも4 週間以上のサービス運行期間がある事
- Google担当者とやり取りを行うと、2か月以上のサービス運行期間が求められることもありますが、公式ルールとして4週間以上のサービス運行期間が必要となります。
- GTFS形式のデータを提供できること
- Google マップに情報を掲載しようと思ったらGTFSデータを作成しなければなりません。データは一度作成したら終わりではなく、運営する乗り物のダイヤ改正等の変更が行われるタイミングや、データの有効期限が切れるタイミング(概ね1年に1回の見直しを推奨)で更新が必要です。
※1:デマンド型運行の乗り物用データフォーマットの1つとして「GTFS-Flex」の議論が世界では進んでいますが、現時点ではGoogle マップがこのフォーマットに対応する発表は行われていません。
Google マップのデータ掲載方法について
Google マップにデータを掲載するためには、GTFSデータ作成の他、Googleとの契約手続きと審査が必要になります。図を使って解説いたします。
まず、Google マップに情報を掲載したいと考えたら、①Google社との契約が必要になります。契約手続きを進めるためにはまず、組織が管理するGoogleのアカウントを用意してください。つぎにこちらのWebサイト内にあるリンク先より、Google 乗換案内にデータを登録するための申し込みを行います。申し込み時に聞かれる設問で「GTFSデータ形式でのデータ提供」が求められますので、合わせて③④の手順も進めましょう。
Webサイトから申し込みを行うと、後日Googleの担当者から契約に必要な情報の提供が求められますので対応を行ってください。契約締結時には契約締結者のメールアドレスの提供が求められる他、契約が英語かつオンラインでの締結となりますので注意が必要です。
契約が締結されると、②パートナーダッシュボードという専用のデータ登録に必要な管理画面が提供されます。
パートナーダッシュボードが提供されたら、③④で完成させたGTFSデータの登録を行います。その後Google担当者のデータチェックを経て、指摘された事項を修正すると晴れてGoogleマップでデータが公開されることになります。
初回登録時にGoogle担当者による行われるデータチェックはかなり細かい内容となり、運営事業者のHPで案内されている内容とGTFSデータの整合性なども確認対象となります。私が何度か経験したこのチェックの中では、バスのダイヤが1便だけ1つのバス停で1分異なっていただけで指摘をされたこともありました。なお、データ更新時には基本的に担当者による人為的なチェックは行われません。
国内コンテンツプロバイダが運営するサービスへのデータ掲載方法について
国内コンテンツプロバイダへのデータ提供手順はシンプルなものとなります。GTFS等のデータを用意して、各社に連絡を行うだけとなります。会社によってはGTFS以外のデータ形式でも受け付けてもらえる可能性はありますが、必要なデータのやり取り等で初回対応時やデータ更新時に各社との連絡や調整が発生いたします。Google マップと合わせて掲載する事を考えると、データはGTFS形式で用意するのが効率的で望ましいと言えます。
各社の連絡先は、手順書や国土交通省が提供する「経路検索事業者等へのデータ提供の手引き」の中に掲載されていますので、そちらを参照してください。なお、Googleマップと比べると国内コンテンツプロバイダが提供するサービスにデータが掲載されるまでは時間がかかることが多いので、ご注意ください。
さいごに
Google マップや国内コンテンツプロバイダが運営するサービスに情報が掲載されても、その事実が一般の方に伝わらないと期待した効果が得られません。情報が掲載された暁には、「うちの町のバスが掲載されたよ、検索できるよ」といった趣旨でのPRを是非行っていただければと思います。
また、データ更新を怠り、実勢と異なる誤った情報がGoogle マップ等で案内され続けると利用者の公共交通機関に対する不信感が発生します。データ更新が滞らないような仕組み作りもデータの初回作成時にご検討ください。
沖縄県:令和2年度観光2次交通機能強化事業委託業務報告書
「5.Googleマップでの経路検索等の観光客への周知・拡散」より抜粋
参考資料
- 標準的なバス情報フォーマット広め隊
「標準的なバス情報フォーマット コンテンツプロバイダへのデータ提供 初回登録編 (2024/2/29改訂)」 - Google 乗換案内パートナー ヘルプ