【コラム】ある青年の人生を変えた公共交通

一般社団法人グローカル交流推進機構 土井 勉

公共交通が支える人々の移動(モビリティ)

公共交通が他の移動手段と比べて優れている点に非排他性(特別の資格や免許を持っていなくても、運賃を支払えばだれでもが利用者できる)があります。

さて、兵庫県下の某町でコミュニティバスが運行されることになりました。

駅と住宅地、それに工業団地を通る路線として計画され、実際に運行がはじまりました。

この工業団地の一つに、特別支援学校を卒業した生徒さんを職員として雇用している企業があります。同時にこの企業は毎年、特別支援学校の生徒さんたちの社会見学の場を提供されています。生徒さん達はここでものづくりの工場の様子を知るだけでなく、現場で働く先輩たちの姿を見ることになります。

先日、この企業の方から、ここで働く特別支援学校の卒業生の話を聴く機会がありました。

この青年が仕事にも、慣れて通勤もバスできちんと通ってくれている。さらに、仕事の進め方について、これまでの従業員の皆さんでは、考えつかなかった視点からの改善提案をしてくれた、とのことでした。大変喜んでお話下さいました。

とても、この提案はとても素晴らしく仕事の工程の改善ができることになったとのことでした。おそらく特別支援学校のOBでないと気づかなかったことだと思う、と言いながら企業の方が感情あふれるお話をいただきました。

これもコミュニティバスがあることで、障碍を持つ人が一人で職場に通うことができるようになったからだということでした。

コミュニティバスがあることで、その青年にとっては就職ができ一人で通勤ができること、企業にとっては新たな戦力を得ることがでたこと、さらに青年の親なども大変に安心されているようです。

大げさに言うと、コミュニティバスの運行は彼の人生を変え、彼の家庭も変えるインフラになったのだと考えられます。

人々の移動=モビリティを支えるということは、クロスセクター効果などで、その価値を定量的に計測することが重要ですが、ここで述べたように定量化できないけれども、大きなインパクトがあることを確認した出来事でした。