担当:福本雅之(合同会社萬創社)
定住推進に公共交通ってどう関係するのだろう?
若年層が地域に住めるためには、通学用の公共交通が必須です。
人口減少の進む地方部の自治体に行くと定住・移住の推進は大きなテーマであり、専任の担当者を置いているところも少なくありません。
定住推進のために自治体が行う施策として思いつくものといえば、都市部の人たちへの移住・定住に関する情報発信、空き家バンク、移住希望者の相談窓口、といったものですが、実は、公共交通の充実は非常に大切です。
定住推進の対象となる地域は、中山間地域であることが多く、公共交通が不便であることが少なくありません。ここへ定住しようという人は、自分で車を運転することが前提となっていますし、定住しようとする人たちもそれを承知していることが多いのですが、親世代はそれで良くても、子供たちは車を自由に利用することができません。
といっても、小中学生の頃はあまり移動のことは問題になりません。小中学校は歩いて通学できる範囲に学校があるか、統廃合されていても義務教育を支えるためにスクールバスが運行されているからです。
問題は、義務教育から外れる高校への通学です。高校は一部の私学を除けばスクールバスが用意されておらず、徒歩通学や自転車通学が困難な場合は自分で公共交通機関を使って通うことが求められます。
ところが、中山間地域では通学に使える公共交通が存在しなかったり、運行されているものの登校時や下校時に使うことができるダイヤが限られて生活に大きな制約を受けたりすることは珍しくありません。
このため、保護者が毎日送迎を行う必要があったり、それが不可能な場合には、高校生はその地域に住んで通学を行うことができないことになります。
せっかく親世代が地域に魅力を感じて移住してきたにもかかわらず、子供が高校に進学する段階で地域を離れざるを得なくなります。少なくとも、子供世代はその地域に住みつづけることは望めないでしょう。これでは定住推進策をいくら実施しても、一時的な居住者を得るのみで、真の意味での定住に結びつけることができなくなります。
高校進学時に希望の高校へ自宅から通学ができないために、高校の近くに転居するのは、こうした転入者だけではなく、従来から住み続けている世帯でも、起こることです。この状況を放置していると定住促進ではなく、人口流出が加速することになります。
このことから、定住推進施策と公共交通施策は密接不可分であり、連携した取り組みが求められると言えるでしょう。
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