バスの利用実績はどのように整理すれば良いですか?

担当:福本雅之(合同会社萬創社)

バスの利用実績を整理するにはどうしたら良いのだろう?

代表的な整理の仕方としてバス停別乗降者数やOD表があります

 路線やダイヤの見直しを行う様な場合、利用の多い停留所を把握したり、どのような区間で利用が多い(少ない)のかを把握することは非常に有益です。こうした利用の実績を知るためには、いくつかの方法がありますが、どのようにまとめると路線やダイヤの見直しに使いやすいのでしょうか?下記に例を挙げますので参考にしてください。

代表的な利用実績のまとめ方

便別利用者数

 便毎に何人の利用者がいたかを記録していくものです。運転手の目視によることが多く、調査の負担も少ないため、毎日記録を取ることができるというメリットがあります。日変動や季節変動、時間帯毎の利用者数を把握することが出来ますので、利用状況の経年変化、曜日別の分析に使用するほか、ダイヤや運行本数の見直しに有効です。例えば、著しく利用の少ない時間帯の便を見直したり、利用の見込めそうな時間帯の増便を検討することが考えられます。ただし、バス停毎の利用状況まではわからないため、路線(起終点や経由地などルート)の見直しには使えません。

 下の表は縦方向に「日付」を、横方向に「便」をそれぞれ並べたものです。それぞれのマスの中の数字は「利用者数」を表しています。利用者数が数字だけ表現されているとどの便が多いのかがわかりにくいので、この表ではエクセルの機能を使い青いカラーバーをつけてわかりやすくしてあります。

バス停別乗降者数

 便単位でバス停毎に乗車した人数、降車した人数を記録するもので、運転手が目視で記録するか、調査員が乗車して記録することが多いです。ICカードが導入されている場合は、カードのログデータから集計することも可能です。利用が少ない路線であれば、運転手が記録することも不可能ではありませんが、運転士の負担は大きくなります。利用が多い路線では、調査員を配置しないと記録することが困難ですから費用もかかります。したがって、毎日記録を取ることは現実的ではありません。

 乗車人数、降車人数がわかるため、バス停毎の利用状況を把握することができ、路線(起終点や経由地などルート)の見直しの検討にも用いることができます。

 下の表は、縦方向に「バス停」を、横方向に便毎の「乗車人数」「降車人数」を並べてあります。さらに「通過」とあるのは、それぞれの区間で車内に乗車している人数(通過人員)を乗車人数と降車人数を差し引いて計算したものです。この例では1便のみしか表示していませんが、横に第2便、第3便と同様の形式で表を続けていくこともできます。

OD表

 「それぞれの利用者が」「どの停留所から乗って」「どの停留所で降りたのか」を記録し、表にまとめます。つまり、どこからどこのバス停までの利用が何人いるか、を表現した表になるわけです。乗車した場所をOrigin(起点)、降車した場所をDestination(終点)と言い、両方の頭文字を取ってODと言います。ODを表形式にするので、OD表と言われています。

 下の表では、縦方向に乗車バス停(Oringin)を、横方向に降車バス停(Destination)を並べています(横方向はバス停の番号だけを表示しています)。それぞれのマスには、OからDの利用者数の数字が入っています。例えば、このOD表の中で最も利用者が多いODは、乗車バス停が「03_市役所・合庁前」、降車バス停が「07_前橋駅」で18人、ということがわかります。

 停留所間の利用状況を可視化できるので、最も詳細に利用状況を把握できます。路線の見直しや経路変更を行う場合に、停留所の組み合わせ(ODペアという)に配慮することができます(例:利用の多いODペアに影響を与えないような路線を考えるなど)。

 最も詳細な利用状況を把握できる反面、すべての利用者の乗車停留所と降車停留所を記録する必要があるため、複数の調査員による乗り込み調査が必要となります。また、アンケートなどと違って利用者すべての状況を記録する「全数調査」としなければ信頼できるデータとなりませんので、調査の労力や費用が多くかかり、調査の頻度は限られてしまいます。ICカードが導入されている場合で、乗車時と降車時にタッチをしている場合には、そのログデータから集計することができます。

最後に

 利用実績データは、便別利用者数<バス停別乗降車数<ODデータの順に詳細な利用状況がわかりますが、データの収集や集計にかかる手間や技術も高くなります。日常的には便別利用者数を把握しておき、詳細なデータが必要な場合にはバス停別乗降者数やODデータを収集するといった使い分けをすることが有益でしょう。

参考文献

中部運輸局:バスデータ活用大百科 ~バス実態調査とデータ活用方法が丸わかり~