地域公共交通の「上位・関連計画」を考える

担当:西堀泰英(大阪工業大学)

地域公共交通計画の上位計画って,総合計画と都市計画マスタープランのことでしょ?

確かにそれらは上位計画と言えますが,それらだけではありません.きちんと理解して事業実施や計画策定を行うことが大事です.

地域公共交通計画の上位・関連計画

 より良い地域公共交通計画,よりよい地域を実現するためにも,地域の公共交通に関係する上位計画や関連計画に即した内容とすることが重要と言えます.言うまでもなく,それらがちぐはぐであれば,よい公共交通サービスを提供することは難しくなるでしょう.

 では,地域公共交通計画の上位計画や関連計画とは何でしょうか.「地域公共交通計画等の作成と運用の手引き 実践編 第4版(2023年10月)1)(以下,手引きと言います)の12ページには「上位・関連計画の例」として,次のものが挙げられています.

  • 都市計画マスタープラン(都市計画法)
  • 立地適正化計画(都市再生特別措置法)
  • 観光圏整備計画(観光圏整備法)
  • 地方公共団体実行計画(地球温暖化対策推進法)
  • 基本計画(中心市街地活性化法)
  • 基本構想・基本方針(バリアフリー法)
  • 港湾計画(港湾法)

 手引きには,「地域公共交通計画を作成する地域において,(略)これらの計画との整合が図られていることが必要です(略)」と記されていますので,この辺りのことはよくご存じの方も多いと思います.

総合計画は含まない?

 ここで違和感を持った方がいらっしゃるかもしれません.

 自治体の最上位計画ともいえる,いわゆる「総合計画」が含まれていません.手引き118ページには「総合計画や都市計画マスタープラン等の上位計画や立地適正化計画等の関連計画」という記述があるにもかかわらず,上の「上位・関連計画の例」には総合計画は登場しません.

 以降では,そのことについての筆者の解釈を中心に記します.上位計画に関するうんちくのような内容ですが,お付き合いいただければ幸いです.

地域交通法の規定を確認すると

 地域交通法(正式には,地域公共交通の活性化及び再生に関する法律)の第5条第6項では,地域公共交通計画が「調和を保たれたものでなければならない」とされる計画等が規定されています.「なければならない」とされているので,義務と言えるでしょう.

少し長いですが,正確を期すため条文をそのまま掲載します.

第5条第6項 地域公共交通計画は、都市計画、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第十八条の二の市町村の都市計画に関する基本的な方針、中心市街地の活性化に関する法律(平成十年法律第九十二号)第九条の中心市街地の活性化に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための基本的な計画、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第二十四条の二の移動等円滑化の促進に関する方針及び同法第二十五条の移動等円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想(第二十九条の八第四項において「都市計画等」という。)との調和が保たれたものでなければならない。

 ここで,上の条文にマーカーを付けた個所のうち,手引きにおいて上位・関連計画として示されているものは次の通りです.

表 地域交通法の規定と手引きの記載内容の関係

地域交通法(第5条第6項)手引き12ページの記載
市町村の都市計画に関する基本的な方針都市計画マスタープラン(都市計画法)
中心市街地の活性化に関する施策を総合的かつ
一体的に推進するための基本的な計画
基本計画(中心市街地活性化法)
移動等円滑化の促進に関する方針,
移動等円滑化に係る事業の重点的かつ
一体的な推進に関する基本的な構想
基本構想・基本方針(バリアフリー法)

 

 地域交通法の条文にも,自治体の「総合計画」については記載がないようです.その手掛かりは,都市計画マスタープランにありました.都市計画マスタープラン(市町村の都市計画に関する基本的な方針)は,都市計画法で次のように定められています.

第18条第2項 市町村は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想並びに都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に即し、当該市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めるものとする。

 ここからわかるように,都市計画マスタープランは,マーカーを付けた「市町村の建設に関する基本構想」と「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」に即して定めることとされています.後者は,都市計画区域マスタープランと言われるものです.

 前者の「市町村の建設に関する基本構想」は,耳慣れない方もおられるかもしれません.これが,いわゆる総合計画と言われるものです.

総合計画と地域公共交通計画との関係

 総合計画は,かつては地方自治法の規定により策定が義務付けられていました.2011年に地方分権改革の一環として法律が改正され,現在は基本構想の策定は義務ではありませんが,地方自治法第96条第2項の規定に基づき,市町村の自主的な判断により議会の議決を経て策定することができます.

 総合計画は,市町村にとってその策定は義務付けではなくなったものの,議会の承認により策定することができるものです.そして,都市計画マスタープランは総合計画に「即して定める」こととされています.

 その都市計画マスタープランと地域公共交通計画の関係は,上で整理した通り,地域公共交通計画は都市計画マスタープラン等の計画と「調和が保たれたものでなければならない」と規定されています.都市計画マスタープランが交通を含む都市全体のまちづくりの方向性を示すものであることを鑑みると,都市計画マスタープランは地域公共交通計画の上位計画と考えるのが自然と言えそうです(とはいえ必ずしも上位計画とする必要はないでしょう).

 総合計画は都市計画マスタープランの上位計画であり,都市計画マスタープランは地域公共交通計画の上位計画と言えることから,総合計画は地域公共交通計画の上位計画であると整理できます.

 もちろん,地域公共交通の上位計画は,これらに限りませんので念のため申し添えておきます.

図 関係法からみた総合計画・都市計画マスタープラン・地域公共交通計画の関係

関連計画について

 関連計画について考えたいと思います.手引き118ページに「総合計画や都市計画マスタープラン等の上位計画や立地適正化計画等の関連計画」という記述があることから,ここでは立地適正化計画について考えます.

 地域交通法第5条第3項第2号には,「都市機能の増進に必要な施設の立地の適正化に関する施策との連携に関する事項」を「定めるように努める」ものとされています.手引き80ページにもこのことが示されています.

 市街地が拡散すると,公共交通の利用者も同様に拡散してしまい,公共交通の維持や確保が難しくなります.公共交通の拠点や沿線に都市機能や居住機能を集積させることで,公共交通の利用を確保するだけでなく,都市全体の魅力を高めることが重要です.居住者視点から見ても,居住を誘導させる地域において公共交通がいずれ無くなるような心配があると,安心して暮らし続けることはできません.だからこそ,地域公共交通計画と立地適正化計画は一体的に作成することが求められるのです.

 そのほかの関連計画は,地域交通法の規定にある中心市街地活性化基本計画や,バリアフリー基本構想などの他,環境,観光,教育,福祉などに関係するものが挙げられます.公表されている地域公共交通計画を確認しても,「計画の位置づけ」や「上位計画・関連計画」の欄でこれらの計画が示されている事例があります.

 本稿を執筆するにあたり,中心市街地活性化基本計画を令和6年度に認定を受けた13自治体2)のうち,ホームページで地域公共交通計画を確認できた12自治体の計画に位置付けられた上位・関連計画を調べてみました.その結果,半分の6自治体の地域公共交通計画で計画の位置づけを整理している箇所において,中心市街地活性化基本計画に関する記述を見つけることができませんでした.

 中心市街地活性化に取り組む自治体では,地域公共交通計画の上位・関連計画の位置づけに記載がなくとも,十分に調和が保たれたものとなっていればいいのですが….

おわりに

 改めて指摘するまでもありませんが,上位・関連計画は,地域公共交通計画の冒頭部分で,ただ位置付ければよいというものではありません.地域公共交通計画の目標や施策が,地域の公共交通に関する事業が,関係する上位・関連計画やそれらに基づく施策と調和したものとなっていることが重要です.それらがただ「位置付けられただけ」になっていると様々な問題を引き起こしかねません.

 例えば,公共交通利便性が低い市街化調整区域において,住宅開発が行われる場合を考えます.住宅開発直後の入居者は若者が多く,クルマで移動できるかもしれませんが,30年後にはクルマの運転が困難になり,コミバスやオンデマンド交通のお世話になることが少なくありません.都市計画の問題を,交通政策が引き受けざるを得ない構図と捉えることもできます.

 そうならないようにするためには,無謀な都市開発を止めることと,住宅開発を公共交通サービスが整っている地域で行うことが望ましいと言えます.だからこそ,都市計画マスタープラン(立地適正化計画)や中心市街地活性化基本計画の取り組みが重要であり,それらと地域公共交通計画は,調和が保たれたものでなければならないのです.

 計画は策定することが目的ではなく,それを指針として地域に相応しい施策を実現することが重要です.施策を実現する際には,ここで取り上げた上位・関連計画以外にも,教育,福祉,産業など,様々な分野との連携を図ることも大事です.自治体で取り組まれる様々な施策が,お互いに連携できる余地は少なくないと思います.自治体内部の部局間でいまだに存在すると言われることがある「縦割りの壁」なんて乗り越えて,情報交換や意思疎通をしっかり行い,よりよい地域公共交通が実現することを願います.

参考文献

1)国土交通省:地域公共交通計画等の作成と運用の手引き 実践編 第4版,2023.

2)内閣官房地域未来戦略本部事務局:令和6年度に認定された中心市街地活性化基本計画, https://www.chisou.go.jp/tiiki/chukatu/r06.html,(2026年2月8日最終閲覧).

※法律の条文は「e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)」を用いた.